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香港のスーパースター、デニス・ホーはなぜ民主活動家に変貌したのか

ドキュメンタリー映画が公開/中国の圧力に揺るがぬ信念、自由求める民の心を体現

市川速水 朝日新聞編集委員

拡大映画「デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング」©Aquarian Works,LLC

絶頂期のスターが民主化と同性愛者の旗手に。熱狂と再生の実話

 香港を代表するスター歌手、デニス・ホー(何韻詩)が絶頂期で社会運動に身を投じ、中国に封殺され、それでも立ち上がる――。そんな生身の姿を追ったドキュメンタリー映画「デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング」が2021年6月、世界に先駆けて日本で劇場公開される。

 監督は中国を題材にしたドキュメンタリーなどで知られるアメリカ出身のスー・ウィリアムズ(Sue Williams 67歳)。2000年代初め、香港での民主化運動の高まりと歩みを合わせるようにスターに上り詰めたデニス(1977年生まれ)が同性愛をカミングアウトし、率先して街に出て民主化を訴えるようになるまでの葛藤が、数々のヒット曲とともに映し出される。ステージでの声や表情の豊かさ、節目に挟み込まれるインタビューのまなざしの強さが印象的だ。

完成直後に国安法施行。香港の貴重な記録

拡大映画「デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング」のポスター ©Aquarian Works,LLC
 映画の完成直後、香港国家安全維持法(国安法)が施行され、民主勢力が徹底的に排除されるようになった。逮捕歴のあるデニスも自由な活動ができなくなった。今では、作品を香港で上映することもほぼ不可能になってしまった。

 その意味で、香港の貴重な記録となった作品が日本や他国で公開されることは、制作中の「憂鬱之島」と同様かもしれない(論座2021年4月21日付の拙稿『香港で上映できないかもしれない「香港の記録映画」―日本起点に世界へ』をご参照下さい)。

 デニス・ホーの静かな闘志や不屈の思いが鮮明に浮き上がる83分の作品だ。

長期密着撮影したウィリアムズ監督にインタビュー

 日本での公開を控えた2021年5月25日、ウィリアムズ監督(脚本・制作も担当)と日米間をオンラインで結んで筆者らがインタビューした。

 2020年秋の国際映画祭「第21回東京フィルメックス」で市山尚三ディレクターとオンライン対談した内容なども踏まえ、再構成した。

拡大            スー・ウィリアムズ監督©Aquarian Works,LLC

「デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング」の公開は6月5日から東京都渋谷区の「シアター・イメージフォーラム」で。全国でも順次公開。配給・宣伝は太秦。【公式サイト


筆者

市川速水

市川速水(いちかわ・はやみ) 朝日新聞編集委員

1960年生まれ。一橋大学法学部卒。東京社会部、香港返還(1997年)時の香港特派員。ソウル支局長時代は北朝鮮の核疑惑をめぐる6者協議を取材。中国総局長(北京)時代には習近平国家主席(当時副主席)と会見。2016年9月から現職。著書に「皇室報道」、対談集「朝日vs.産経 ソウル発」(いずれも朝日新聞社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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