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ワクチン失政――ゲームチェンジャーを見誤ったツケはかくも大きい

コロナとの戦いでオセロのように形勢逆転したアジアと英米

花田吉隆 元防衛大学校教授

拡大myboys.me / Shutterstock.com

日常と景気が回復する英米、もたつき悪化するアジア

 まるでオセロゲームを見ているようだ。形勢が一気に逆転した。

 ほんの少し前まで、英米は共に群を抜く感染者数、死者数で、その惨状は目を覆うばかりだった。それに対し日本を含むアジアは、感染を抑え込み新型コロナウイルスの制圧に成功したかのようだった。それが今や英米では、変異株の脅威はあるものの、路上に張り出したレストランで、人々がマスクなしで食事をし、酒を酌み交わす。景気回復が進み、もたつくアジアとの差が開きそうだ。

拡大米国ではワクチンの普及に伴い急速に経済活動が再開し、飲食店にも人出が戻っている=2021年5月25日、米ミネソタ州ブルーミントン
 アジアで最も深刻なのがインドで、国内では死者を悼む姿が町中にあふれ、医療は既に崩壊した。ところがここに来てマレーシアが危ないという。一日当たり感染者数が6000人を超え、5月26日までの7日間平均で、人口100万人当たり感染者数が211人に達したが、これはインドの165人を上回る数だ(5月29日現在)。

 韓国、台湾、ベトナム等、かつて優等生と称された国々も事態が一変し、かくいう日本も他人事でない。

 潮目が変わったのが昨年12月2日。この日、英国でワクチンが承認され直ちに全国規模で接種が始まった。今や、100人当たり接種回数(6月3日現在)で、英国97.7回、米国89.3回と世界の先頭を行く。欧州で遅れが指摘されるドイツでも62.0回、フランスが54.7回だ。これに対しアジアは大きく出遅れ、中国48.8回、インド15.6回、韓国16.5回、日本11.7回、台湾2.1回に止まる。

 偏にこのワクチン接種のスピードが形勢を逆転した。ワクチンがゲームチェンジャーなのだ。

 / Shutterstock.com拡大新型コロナウイルスに感染して亡くなった人たちの火葬=2021年4月、ニューデリー(Exposure Visuals / Shutterstock.com)

石油・核・デジタル覇権、そしてワクチン

 ゲームチェンジャーは、オセロの盤上の白黒を一気に塗り替える。戦いの帰趨を決定的に左右するからゲームチェンジャーと呼ばれる。

 やや突飛ながら一例を挙げれば、かつて、石油がそうであり、石油の出現は政治、経済、社会から軍事に至るまで全てを一気に変えていった。米国では、この石油資源を握ったスタンダードオイルのロックフェラーがたちまちの内に億万長者に躍り出た。核もまたゲームチェンジャーであったことはいうまでもない。冷戦期を通じ、核の優位を目指し米ソはあくなき軍拡を繰り広げた。

 現代に於いて、石油、核に相当するのはデータとそれを生むデジタル技術だ。かつて石油はダイアモンドと言われたが、今や、データがダイアモンドと言われる。かつて米ソは核の覇権を競ったが、新冷戦に於いて、米中が狙うのはデジタル覇権だ。かつての核は現代に於いてデジタルに置き換わった。コロナとの戦いに於いて、このデジタルに相当するのがワクチンに他ならない。

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