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ワクチン失政――ゲームチェンジャーを見誤ったツケはかくも大きい

コロナとの戦いでオセロのように形勢逆転したアジアと英米

花田吉隆 元防衛大学校教授

拡大3度目の緊急事態宣言についての菅義偉首相の記者会見が映し出された街頭の大型ビジョン=2021年4月23日、東京都新宿区

一時しのぎでしかない緊急事態の繰り返し

 ゲームチェンジャーを見誤ると手痛いしっぺ返しを受ける。新型コロナウイルスが登場した1年余り前、インペリアル・カレッジ・ロンドンが発表した論文は、「ワクチンが開発され人々に行き渡るまでの2,3年間はコロナとの戦いが続く」とした。つまり、ワクチンがゲームチェンジャーだと明言した。

 それまでの間、人類が持つコロナとの戦いの武器は、古典的な隔離政策しかない。各地でロックダウンが繰り返されていったが、ロックダウンは経済的痛みを伴う。その痛みに耐えかね経済を再開すれば今度はコロナが襲ってくる。これまで世界はこれを繰り返すしかなかった。

 つまり、徹底的にロックダウンをするならいざ知らず、そうでない限り、「緊急事態宣言はもうこれっきりにしてほしい」と言ってもそうはいかない。締め付けを緩めれば、コロナは再び襲いかかってくるのであり、我々ができるのは、緊急事態宣言を出したり引っ込めたりして一時しのぎを繰り返すだけだ。宣言発出を「早めに、広く、厳しめに」すれば少しは効果が上がるが、それが一時しのぎであることに変わりはない。

 この、まだるっこしい対応を一気に変えてしまうのがワクチンだ。

拡大緊急事態宣言を受け、百貨店の店頭に掲示された臨時休業の案内=2021年4月25日、東京・渋谷

ゲームチェンジャーと理解した英米。開発と接種環境に総力

 結局、英米とアジアとの差は、ワクチンのゲームチェンジャーとしての意味を正しく理解したかどうかだった。元々、欧米には世界のワクチン開発をリードする大手製薬企業が集中しているというアドバンテージがあったとはいえ、やはり何といっても、ワクチンが国民の命を守る最大の武器であると早くから認識し、戦略的に対応してきたことが大きい。

 報道で伝えられるところでは、英国では、早い段階で医薬産業に精通した名うての投資家を責任者に任命し、ワクチン情報を組織的に収集、それに基づき大量の資金を投じ、国を挙げての開発を加速していった。これが早期の成果につながった、という。

 米国は、トランプ大統領の時、接種が遅々として進まなかったが、バイデン大統領になり一気に接種が加速された。その際なりふり構わず、接種に来た人にポテトチップスや野球の観戦チケットを配っているという。マリファナを配った、との未確認情報もある。何より、接種にあたる者を当初から医者に限定することなく、医学生、看護学生、救急隊員のボランティアで一定の研修を受けた者にも広げ接種を急いでいるという。

 日本はようやくここにきて接種にあたる者の枠を医者、看護師から歯科医師等に広げ始めたところだ。

拡大日本ではワクチン接種態勢の不備が次々に露呈。打ち手不足には、歯科医師会の協力が決まった。実施を前に接種の研修を受ける歯科医師=2021年5月30日、名古屋市中区の愛知県歯科医師会館

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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