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ワクチン失政――ゲームチェンジャーを見誤ったツケはかくも大きい

コロナとの戦いでオセロのように形勢逆転したアジアと英米

花田吉隆 元防衛大学校教授

アジアの「失敗」は、初期の抑制「成功」が遠因に

 何故アジアが後塵を拝することになったかといえば、アジアで感染が抑えられていたからだ、というのが共通の理解だ。成功したがゆえに失敗の遠因を生んでしまった。

 専門家は、アジアで感染者が低く抑えられていたため、アジア諸国(除く、中国)の政府がワクチン開発を急ぐインセンティブを欠いたことが大きい、と指摘する。その他、感染者数が少ないことによる治験者の不足、有力製薬企業の不在による供給不足、承認プロセスの遅滞などが原因として挙げられている。

日本は柔軟な対応できず政府支援も希薄

拡大緊急事態宣言の延長決定を受け、会見する菅義偉首相=2021年5月28日、首相官邸
 日本は、過去にワクチン被害があったこともあり審査手続きを特に慎重にしているのだろうが、緊急事態には手続きを簡略化し早期の接種につなげるといった柔軟性がない。審査には、国際的治験と別に国内での治験が必要で、これが今回足かせになった。米国が、緊急使用許可制度で、一定の安全性や有効性が確認できれば承認前でも接種を開始できる、とするのと大きく異なる。

 更には、ワクチン開発は民間がリスクを容易に取ることができない分野であり、政府支援が希薄であることは体制として改善の余地があろう。5月25日、政府協議会はワクチン開発に関し、こういった点の提言を取りまとめた。

拡大ベルギーから到着した米モデルナ製の新型コロナウイルスのワクチン=2021年4月30日、関西空港

インドの急変。警戒薄れた所へ変異株出現

 インドはピークを過ぎたとの見方もあるが、依然厳しい状況が続いていることは前述の通りだ。それにしても、日米豪印の4か国で構成するクアッドが、インド製ワクチンの輸出促進を合意したのがほんの少し前のことで、今日の混乱は予想もされていなかった。今では輸出どころか、国内使用分も足りない。まさに今昔の感がある。

 事態がここまで急変した原因は、3月から4月にかけて行われた地方議会選挙と、4月の世界最大の宗教行事で、1億人以上がガンジス河で沐浴する「クンブ・メーラ」にあった、とされる。インドはコロナを抑え込んだと思い、多人数が集まることへの警戒感を欠いてしまった。丁度そのころインド変異株が出現し、事態を一気に悪化させていく。

 たった、と言っては語弊があるが、この3つの要素が重なっただけで、抑え込んだはずのウイルスが猛威を振るい医療体制を壊滅させてしまう。これがコロナの恐ろしさだ。

 / Shutterstock.com拡大酸素用のシリンダーを持ってガス業者の前に並ぶ人々=2021年4月30日、ニューデリー(Exposure Visuals / Shutterstock.com)

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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