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五輪開催の是非は、住民投票で決すべし!(上)

主権者の意思が反映されないままでの「強行突破」は、国民主権や市民自治に反する

今井 一 ジャーナリスト・[国民投票/住民投票]情報室事務局長

 コロナ禍が収まらないままでの東京五輪・パラリンピックの開催は正当か否か。それについては、すでに多くの医療関係者や言論人が見解を述べている。ここでは、その正当性の有無を論ずるのではなく、開催もしくは中止の判断・決定に開催都市の主権者・住民が関与できなかったことの不合理について述べたい。そして論考の「下」では住民投票で五輪開催を拒否したり中止したりした欧米の都市の事例を具体的に紹介する。

 新型コロナウイルス対策で、政府は4月下旬より東京、大阪、兵庫、京都の4都府県に3度目となる緊急事態宣言を出し、6月8日時点でそれはまだ続いている。そんな状況において、本年5月15-16日に朝日新聞が全国の人を対象に行なった世論調査のうちオリ・パラ開催に関する3択の設問では、[今年の夏に開催する14%/再び延期する40%/中止する43%]という結果が示された。

 朝日新聞以外の報道機関も同様の調査を行なっているが、5月半ばの時点では、いずれの調査でも今夏開催に賛成する国民は少数派となっていた。

 にもかかわらず、IOC(国際オリンピック委員会)、東京都、日本政府は7月23日開会の既定路線を変えず、その日に向かって一直線。東京オリ・パラ組織委員会の橋本聖子会長は、国内外のメディアに対して「開催は100%であり、中止・再延期はない」と断言した(6月3日)。

合同記者会見で発言する東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長。後方の画面はIOCのジョン・コーツ副会長=2021年5月21日午後、東京都中央区拡大合同記者会見で発言する東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長。後方の画面はIOCのジョン・コーツ副会長=2021年5月21日午後、東京都中央区

 春先ならともかく、開会前月となったこの時点で開催を中止させるのは難しい。開催強行派は、7月23日に近づけば近づくほど開催を受け入れる人は増え、中止せよという声は鎮まると読んでいるのだろう。現に、6月に入ってから行われた最新の世論調査では、開催賛成の人が急増している。

 例えば、JNNが6月5~6日に実施した調査では、「開催すべきだ」が44%(「通常通り開催」3%、「無観客で開催」23%、「観客数を制限して開催」18%)。一方、「中止すべきだ」は31%、「延期すべきだ」は24%となっている。

 また、読売新聞社が6月4~6日に実施した調査では、「開催する」が50%(無観客26%、観客数制限24%)、「中止する」は48%で、賛否が逆転している。

 とはいえ、新型コロナウィルスの感染が拡大したこの1年を通してみれば、今夏開催に首をかしげる人が多かったのはまちがいなく、著名なアスリートや人気芸能人らもネットやテレビで堂々と開催に異議を唱えたし、新聞各社の社説も5月以降旗色を変えるところが増え、開催強行に対して疑問や懸念を投げかける論調となった。(参照:五輪強行に各紙論説の「疑義」「中止」続々〜社論の潮目は変わった


筆者

今井 一

今井 一(いまい・はじめ) ジャーナリスト・[国民投票/住民投票]情報室事務局長

 1991年以降、ソ連、ロシア、スイス、フランス、イギリスなどで国民投票の取材を重ね、国内では新潟県巻町、名護市、徳島市など各地で実施された住民投票を精力的に取材。2006年~07年には、衆参各院の憲法調査特別委員会に参考人及び公述人として招致され、国民投票のあるべきルールについて陳述する。著書に『CZEŚĆ!(チェシチ)──うねるポーランドへ』(朝日新聞社)、『住民投票』(岩波書店)、『「憲法9条」国民投票』(集英社)、『国民投票の総て』、『住民投票の総て』(ともに[国民投票/住民投票]情報室)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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