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自由民主党 林芳正、齋藤健、村井英樹、松川るい4議員が語る令和政治の課題

コロナ危機とその後の日本を待ち受ける深刻な課題にどう取り組むか?

林芳正、齋藤健、村井英樹、松川るい 自由民主党国会議員

 コロナ禍は日本の社会が抱える課題をあらわにしました。それは、格差や貧困といった社会問題、雇用や不況などの経済問題、医療やITなど社会インフラに関わる問題、国際関係や民主主義のあり方をめぐる問題など、実に多様です。
 「論座」では、こうした課題に向き合い、どうしたら解決できるのかをともに考え、行動するきっかけとなる論考を、これまで以上に力を入れて公開していきたいと考えています。その“政治版”として、自由民主党の4人の議員、林芳正さん、齋藤健さん、村井英樹さん、松川るいさんに、継続的な寄稿をお願いしました。
 それに先立ち、今の政治をどう見るか、どんな課題に着目し取り組もうと考えているか、座談会で語っていただきました。コメント欄にぜひ、ご意見をお寄せください。(司会 論座編集部・吉田貴文)
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林芳正(はやし・よしまさ)
1961年生まれ。東京大学卒業後、三井物産、大蔵大臣秘書官などを経て1995年参院選で初当選。当選5回。山口選挙区。大蔵政務次官、防衛大臣、農林水産大臣、文部科学大臣などを歴任。著書に『やさしい金融・財政論』、『国会議員の仕事』
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齋藤健(さいとう・けん)

1959年生まれ。東京大学卒業後、通産省(現経済産業省)に入り、大臣秘書官、埼玉県副知事などを経て2009年衆院選で初当選。当選4回。千葉7区。農林水産大臣などを歴任。現在、予算委員会理事。著書に『増補 転落の歴史に何を見るか』
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村井英樹(むらい・ひでき)

1980年生まれ。東京大学卒業後、財務省に入り、米ハーバード大大学院留学、同省主税局などを経て2012年の衆院選で初当選。当選3回。埼玉1区。自民党副幹事長や内閣府大臣政務官などを歴任。現在、国会対策副委員長(予算・文科担当)
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松川るい(まつかわ・るい)

1971年生まれ。東京大学卒業後、外務省に入り、国際情報統括官組織首席事務官、女性参画推進室の初代室長などを経て2016年参院選で初当選。当選1回。大阪選挙区。党外交部会副部会長などを歴任。現在、防衛大臣政務官兼内閣府大臣政務官

拡大座談会で語る(左から)松川るいさん、齋藤健さん、林芳正さん、村井英樹さん=2021年6月1日、衆院第一議員会館

今はコロナ対策に全力。その後も課題が続々

――メディアでは新型コロナの感染状況、ワクチン接種の進み具合、東京五輪の開催の可否などについてのニュースが連日、報じられています。そんななか、政府のコロナ対応をめぐり、有権者の間には不満が高まっているように見えます、秋までには衆院選もあります。与党議員として現状をどう見ているか。また、政治の課題はどこにあると考えていますか。

拡大齋藤健さん=2021年6月1日、衆院第一議員会館
齋藤 政府のコロナ対策への国民の皆さんの不満は、ひしひしと感じています。今、駅頭にも立っていますが、無党派で自民党を支持してくれていた人たちが離れているという皮膚感覚がありますね。先日もいったん行き過ぎた人がわざわざ戻ってきて、「自分は無党派だけど齋藤さんを推している。でも、周りの無党派では自民党の評判はほんとうに悪いよ」と言われました。

 まずはコロナ対策に全力をあげるしかない。ただ、その一方で、コロナ危機が去った後、さらに大きな危機がくるんじゃないかと思っています。

 産業の競争力はかなり痛んでいる。財政は大変だ。少子化も止まらない。安全保障も、有事に対する備えがどれだけあるのか。これらの問題に我々は早晩、直面します。本来はコロナと平行して取り組むべきですが、その余裕がないのには忸怩(じくじ)たる思いです。

拡大村井英樹さん=2021年6月1日、衆院第一議員会館
村井 コロナ禍で国民の皆さんに怒りが広がっているのは、私も実感します。全力をあげてコロナに打ち勝つ、ワクチン接種などに全力を注ぐことが、今は大切です。

 そのうえで、その先に目を向けたとき、私は政治の役割、課題が二つあると思います。一つは、危機に瀕して政治がしっかり機能するようにすること。2020年代、30年代に金融、安保、災害、新たな感染症などの危機が来たとき、政治が対応できるようにしなくてはならない。

 もう一つは、政治が明るい未来像を示すこと。例えば、将来、年金をもらえないと思っている若い人は多いのですが、決してそんなことにはなりません。きちんと改革を進めれば、経済も社会保障もしっかり維持できます。皆さんに明るい見通しを持ってもらうためにも、必要な改革を一つずつ実行することが政治に求められていると思っています。

「負のお家芸」の克服、台頭する中国への対応も

拡大林芳正さん=2021年6月1日、衆院第一議員会館
 昨年夏にコロナの「第1波」が収束した時には、「日本は欧米のような規制をかけなくてもうまくいって素晴らしい」と言われましたが、その後の対応がやや「経路依存的」になり、同じようにやればいいと思ってしまった。昨年のうちに、感染力の強い変異種への備えができなかったのは残念だったと思います。

 対策に至るプロセスをもう少し説明をしたほうがよかったとも思います。我慢してもらうにしても、どんな理由で我慢してもらい、どうなれば解除されるかが、あまり伝わっていない。メディアの伝え方もありますが、説明が十分ではなく、どこもかしこも不満が残ることになったと思います。

 コロナ後の課題は、私が言う日本の「負のお家芸」をどう克服するかです。日本は「シーズ」は結構つくっています。ヒトゲノムの解析をはじめたのは日立。3Dプリンターも日本の研究者がはじめた。タネを撒きながら、実になる前に他国の人に持っていかれ、果実を得られないという「負のお家芸」が最近目立つ。政府がお金をつけるだけではなく、お金が再投資される仕組みがあってもいいと思います。

拡大松川るいさん=2021年6月1日、衆院第一議員会館
松川 日本は「平時と善人のみ」を前提とした社会・法体制になっていると感じます。コロナ危機では、危機時なのに平時と同じ対応をしてしまうという弱点が、ワクチンをはじめ各所で露呈しました。日本は民主主義の国ですが、危機に当たっては、平時と異なる迅速で効率的、合理的な判断が問われます。

 コロナに勝るとも劣らない日本の課題は、強大化し世界の覇権を狙う中国にどう対処するかです。強権的、高圧的で我々と異なる価値観を持つ国が、すぐ横で大きくなっている。日本としての中長期的な対中戦略を持って中国に対処していくことは、日本外交の最大の課題だと思います。

 中国の問題は海と経済安保の二正面で顕著です。海については、尖閣諸島や南シナ海だけでなく、台湾有事への危機感も強く持っています。仮に台湾海峡で有事がおきれば、日本も無関係ではいられない可能性が高い。台湾と与那国は110キロしか離れていません。地図をみれば明らかですが、仮に中国が台湾を攻めようとすれば、大陸正面からだけで背後や周辺は放置ということにはならない。そこに尖閣諸島、先島諸島がある。ですから、台湾海峡で有事が起きないように中国を思いとどまらせることは、日本自身の安全保障のためにも重要です。

 経済安保の問題もあります。中国はソ連と異なり、経済・技術強国であり、「超限戦」で見られるように、経済や技術を覇権獲得のために意図的に用いています。したがって、機微に触れる技術や半導体は安心できるサプライチェーンで調達するようにしないと、国の安全は保てません。