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自由民主党 林芳正、齋藤健、村井英樹、松川るい4議員が語る令和政治の課題

コロナ危機とその後の日本を待ち受ける深刻な課題にどう取り組むか?

林芳正、齋藤健、村井英樹、松川るい 自由民主党国会議員

「民主主義対専制主義」の構図の中で

齋藤 中国の台頭が日本の危機になるという指摘は、非常に重要です。バイデン米大統領は「民主主義対専制主義」と言っていますが、そういう構図に世界が入りつつある。

 「専制主義」の人たちの本音は、「今ある法と秩序は、自分たちが弱かった植民地時代に西欧諸国がつくった秩序で、従うつもりはない。自分たちは力を付けたので、新しい秩序をつくる」というところだと思います。そういう人たちが台頭してきているのです。

 既存の法と秩序を守ろうとするアメリカは、このような動きを抑えようとしますが、専制主義の中国からすれば、「東シナ海や南シナ海で中国がやっていることをアメリカは批判するが、かつてアメリカがカリブ海でやったことと同じだ」と、聞く耳をもちません。そんなアメリカと中国に挟まれ、日本はどうすればいいのか。

松川 アメリカと日本は対中において、ほぼ国益が重なっていると思いますが、地政学的違いもあり、まったく同じというわけではありません。日本は中国のすぐ隣にあり、中国との平和で安定的な関係の維持は極めて重要です。アメリカは太平洋を挟んで向こうに位置し、今は民主主義と専制主義のどちらが主導権を握るかという戦いのフロントに立っていますが、引きこもることもできる。

 ご指摘の通り、中国は失地回復の最中で、その最たるものが台湾です。習近平体制は極めて強固ですし、勝てない戦いは共産党体制そのものを揺るがせかねないので、そう簡単に台湾に手出しをするとは思わないし、米中のパワーバランスについては時間が中国を利すると考えているでしょうが、人口減少が進む中国にすれば、気長に待つ余裕もたぶんない。この10年間ぐらい、抑止力を高め、偶発的なものを含めて紛争が起きないようにする、そしてできれば中国の行動を変えさせることが大事になります。

 バイデン米政権も紛争したいわけではない。同盟国やパートナー国と連携して強い立場をつくることで、中国の強権的行動を抑止しつつ、対中外交に取り組もうとしており、それは日本自身の対中戦略と重なります。

 もうひとつ指摘しておきたいのはASEANの重要性です。日本が提唱した自由で開かれたいインド太平洋アジェンダが、米国や英仏など欧州を含む世界の戦略となっていますが、その帰趨を左右するのはASEANや太平洋諸国などの「間にいる国々」だと思います。私はASEANに関する仕事をやっていましたが、彼らは中国に支配されたくはないが、「中国に対処するために連携しよう」と言われても、中華経済圏にいる現状では、経済的な代替策なしに「そうですね」とはならない。そうした国々に「Quad」や英仏などインド太平洋戦略にコミットする国々が、積極的に投資をする、市場を提供する、援助をするといった経済的な関与策が不可欠でしょう。

日本人が自信を取り戻す時代に

――ここまでの議論で見えてきたのは、コロナ禍を通じて、日本の有事対応の脆弱さが鮮明になったということだと思います。振り返れば、平成の30年間、日本は冷戦終結後のグローバル化が進む世界に時代に対応できる政治を求めて、様々な改革を進めてきました。それは選挙制度改革や行政改革、地方分権改革、司法改革など多岐に渡りましたが、危機対応については十分ではなかったということでしょうか。令和の政治ではどういう改革が必要になると考えますか。

村井 平成の一連の改革は、一定の成果は出始めていると思います。たとえば官邸主導への転換です。55年体制では自民党の族議員と省庁の抵抗がからんで、総理が進めたい施策が進められないことがありましたが、今は総理・官邸がやろうと思ったらできる態勢は少なくとも実現しました。

拡大村井英樹さん=2021年6月1日、衆院第一議員会館
 ゆとり教育も、いろいろ議論はありましたが、大学生の中に新しいビジネスを自分たちでやろうという人が目立つようになっています。政治の側が手当てしてきたことが少しずつ形になり、ベンチャーで上場したり、大企業に技術を買ってもらったり、という動きが出始めている。平成の改革の中には、花開く前の段階と評価できるものも少なくないと思います。

 そのうえで私は、令和は日本人が自信を取り戻す、取り戻すべき時代だと思っています。日本には今、様々な懸念があります。若い人たちが結婚しない、子どもを持たない。高齢者が貯金を使わない。企業がもしもに備えてお金を貯め込む。根本的な原因は、日本人の自信喪失であり、閉塞感だと思います。日本には、まだまだ優秀な人材がいますし、世界有数の技術力や製造業の基盤があり、豊富な金融資産もあります。細かな施策よりも、まずは自信を取り戻す。実現可能な明るい未来像を共有し、自信を取り戻すことで、日本企業、日本人の潜在力を発揮していくことが大切です。

優秀な人材をどう育て活用するか

松川 私も、令和の改革で大切なのは、日本がアニマルスピリッツを取り戻すことだと思います。少子高齢化で政治的リソースが若者にいかない現状を変え、若者に投資し、権限を与えて、国や社会、経済がじわじわと衰退する“ユデガエル”状態から抜け出さなくてはいけません。コロナで社会基盤の弱さが明らかになった今は、転換の好機です。例えば若い人を中心に、こんなにもダメだったIT基盤を構築するというのもありだと思います。

拡大松川るいさん=2021年6月1日、衆院第一議員会館
 もうひとつは、優秀な人材の育成と活用です。国をつくるのは人。資源がない日本のような国はなおさらそうです。50年先には国がないかもしれないという危機感を持つシンガポールは人材を使い倒しています。官僚に優秀な人材を集め、時代の先を見据えたプロジェクトに取り組む。そういう人材は官僚を辞めた後も、一流企業で働きます。

 日本はどうか。かつては優秀な人材が霞ケ関で国づくりに邁進していました。ところが、1990年代の行政改革で政治主導が進み、第2次安倍晋三政権はそれをうまく活用したと思いますが、一方で官僚が積極的に知恵を出して仕事することが少なくなった気がします。やりがいが減った“ブラック”な霞が関に一流大学の学生が行かない、若くして辞めて外資系にいく、なんていうことも起きている。

 政治主導は正しいと思うのですが、それではその分を政治家がカバーしているかというと、自分も含めて申しわけないですが、政治家を育てて活躍してもらうというシステムになっていません。選挙対策に大半の時間をとられ、国民の声や中長期的視点を反映した政策に取り組むのは容易ではありません。一方で、アメリカでは中長期の政策づくりを担うシンクタンク文化も日本ではいま一つです。人材をどう育てて活用していくかが、令和の大きな課題だと思います。