西田 亮介(にしだ・りょうすけ) 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授
1983年生まれ。慶応義塾大学卒。同大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。専門は情報社会論と公共政策。著書に『ネット選挙』(東洋経済新報社)、『メディアと自民党』(角川新書)、『マーケティング化する民主主義』(イースト新書)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
民意に耳を傾けない菅政権。期待を裏切られた我々は何を選べばいいのか
オーストラリアから、東京五輪の競技の中でもっとも早く開催されるものの一つ、女子ソフトボールの選手団が事前合宿のために来日した(6月1日)。開会式まで1カ月あまり、五輪の準備は粛々と進む。東京五輪組織委員会の「競技スケジュール」も今のところ、特段の変化もなく掲載され続けている。
ソフトボールと並んでもっとも早い7月21日から競技が始まる予定のサッカーは、北海道・札幌、宮城、東京で実施される。北海道と東京は、5月28日に延長された緊急事態宣言の対象地域。そして、開会式は、7月23日の20~23時に東京・信濃町のオリンピックスタジアムで行われる予定なのだが……。
一方で、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長をはじめとする専門家はこの間、五輪開催に対して懐疑的な態度をいっそう強めている。感染の収束が見えないなかで、また現実にワクチン接種が進まないなかでリスクを取って開催すべきなのか、というわけだ。
世論調査でも、東京五輪の今夏開催に対する否定的な見解が強い。やはり5月10日に更新されたNHKの世論調査では東京五輪の開催形態を聞いた項目で「中止」が49%を占め、何らかの形での開催を求める項目の合計を上回っている。
さらに年代別で見ても、与党支持層だけに限定しても「中止する」がもっとも多い回答になっている。4月のNHKの調査では「中止」は32%だった。開催時期が近づくなかで、人々は東京五輪への懸念を強めている様子がうかがえる。
なおテレビ朝日の5月の世論調査でも「中止」が49%で、「さらに延期」をあわせれば82%となり、7月開催の15%を大きく上回っている。