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五輪中止の選択肢は存在せず~「国民の安全第一」という日本の規範が変わった

民意に耳を傾けない菅政権。期待を裏切られた我々は何を選べばいいのか

西田 亮介 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授

「国民の安全第一」は安直な期待だったのか?

 開催できる条件にも、できない条件にも言及しておらず、「開催一択」である。更問(追加の質問)が禁止されているにもかかわらず、じれったさに耐えかねたのであろう質問者が緊急事態宣言下でも開催できるのかを問うているが、「テスト大会も国内で4回開催」した(……ので、当然本大会も開催できる)という返答のみがなされている。

拡大東京オリンピック・パラリンピックの準備のため中央広場を立ち入り禁止にするため、柵を設置する作業員ら=2021年6月1日午前10時16分、東京都渋谷区の代々木公園、藤原伸雄撮影

 政権は開催/中止について、検討もせず、説明もせず、世論に耳を傾けるポーズすら見せなかったのだ。桁違いの予算を不透明に投じながら、これである。

 安倍政権と菅政権において、行政府の長である総理が、正当な国民の代表が集う立法の場である国会や、国民の知る権利を国民に代わって行使している記者会見の場で、まともな答弁をしないことにも、その結果、総理や政府の意図がさっぱりわからず、これから行おうとする政策の内容が理解困難であるということにも、我々は慣れすぎてしまった感すらある。

 思えば、コロナ禍でもそうだった。緊急事態宣言はなぜ、いつ発出されるのか、多くの専門家がリスクを述べているのに、なぜ前倒しで解除するのかは、わからずじまいだった。そして、専門家の予想通り、感染の新たな波がたびたび押し寄せた。

 我々は、まともに、そして真面目なものとして自国の政府を捉え過ぎていたのかもしれない。

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筆者

西田 亮介

西田 亮介(にしだ・りょうすけ) 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授

1983年生まれ。慶応義塾大学卒。同大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。専門は情報社会論と公共政策。著書に『ネット選挙』(東洋経済新報社)、『メディアと自民党』(角川新書)、『マーケティング化する民主主義』(イースト新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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