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民主主義の脅威という話

ハーバーマス、アガンベン、フーコーから読み解く

塩原俊彦 高知大学准教授

ウイルスの脅威による「例外状態」の強化

 パンデミック下で話題になったのは、イタリアの著名な哲学者、アガンベンの主張とそれへの批判であろう。彼は2020年2月、彼自身の出版社クオドリべト(Quodlibet)のウェブサイトを使って、イタリア政府が検疫や閉鎖によって導入している「テクノメディカル専制主義」を批判し始めたことが知られている(詳しくは『現代思想5 緊急特集 感染/パンデミック』に収載された高桑和巳訳のほか、大澤真幸×國分功一郎『コロナ時代の哲学』を参照)。その内容やその後の経緯などを考察した「ジョルジョ・アガンベンは検疫や閉鎖の『テクノメディカル専制主義』を批判している」という記事や同年7月に発行したアガンベンの投稿集増補版(Where Are We Now? The Epidemic as Politics, Rowman & Littlefield)などを参考に、いったいアガンベンが何を問題視したのかについてみてみたい。

 アガンベンの最初の論考は2021年2月に公表されたもので、その主張はそのタイトル、「根拠薄弱な緊急事態によって引き起こされた例外状態」によく表されている。彼は、「想定される疫病」(COVID-19)は、例外的な状態、非自由主義的な抑圧のアリバイに過ぎないと指摘している。「主権」が「例外状態」を布告する口実は、かつてはテロの脅威であったが、今度はウイルスの脅威を言い訳にしてその主権を強化・拡大しようとしているというのだ。

 これを専門家との関係で別言すれば、アガンベンは、戦争においてみられた技術革新である

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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