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安倍・菅政権の政治手法は政官関係をどう変えたか~2021政治決戦 何が問われるのか②

総選挙を政治と官僚の関係の現状を評価し、そのあり方を抜本的に見直す契機に

星浩 政治ジャーナリスト

内閣人事局を設置。官邸主導の霞ケ関人事が加速

  安倍首相と菅官房長官にとって、内閣法制局長官を交代させて関連法を成立させたことは「成功体験」となった。その後、安倍政権は官邸主導による霞が関の幹部人事を加速させていくことになる。

 例えば、農林水産省では2016年、省内で主流派とは言えなかった奥原正明氏を経営局長から事務次官に抜擢した。奥原氏は、菅官房長官が掲げていた農協改革に積極的な考えを示していため、菅氏が次官への昇格を強く求めたといわれる。菅氏は官房長官としてふるさと納税制度を推進し、この制度に異論を唱えた総務省の担当局長を更迭させたこともあった。

 制度的には2014年に首相官邸内に内閣人事局が設置され、ここで霞が関の官僚のうち審議官以上の約600人の人事を決定する仕組みができた。安倍、菅両氏の人事権行使を支える枠組みが整ったことになる。

拡大内閣人事局発足式が行われ看板かけをする、(左から)加藤勝信内閣人事局長、稲田朋美内閣人事局担当大臣、安倍晋三首相、菅義偉官房長官=2014年5月30日、東京・永田町

財務省・佐川宣寿氏のケース~政権への忖度が露呈

 財務省の佐川宣寿氏が15年に関税局長に就いたのも、内閣人事局で了承された人事だ。佐川氏は事務次官などのトップコースを歩んでいたわけではない。関税局長は「上がりポスト」と言われている。局長の後は退任して民間企業などに転出するのが普通だ。

 しかし、佐川氏は玉突き人事もあって、16年に理財局長に転じた。理財局長はその後に国税庁長官や主計局長・事務次官などに昇格する可能性が高いポスト。佐川氏は俄然張り切って省内でも発信し、国会答弁にも臨んだと、当時の財務省関係者は証言する。

 そこで発覚したのが、森友事件だった。大阪府豊中市の国有地が、大幅値引きされて学校法人森友学園に払い下げられたことが明らかになった。森友学園は小学校を開設する計画を持っており、安倍氏の昭恵夫人が名誉校長に就く予定だった。学園の籠池泰典理事長は、安倍夫妻と懇意であることを公言していた。

 大幅値引きとの関連を国会で追及されると、安倍氏は「私や妻が関係していたら、総理大臣も国会議員も辞める」と断言した。担当の佐川理財局長は、値引きの交渉経過などを記録した記録は「残っていない」と繰り返した。そして、佐川氏は財務省の事務方ナンバー2である国税庁長官(次官級)に昇進した。

 その後、森友学園関連の交渉記録が改ざんされていたことが発覚する。安倍昭恵氏に関する部分などが削除されていた。文書を作成した近畿財務局の職員が、財務省幹部から改ざんを迫られ、自殺に追い込まれた。財務省の調査では、佐川理財局長が改ざんの中心的役割を担っていたと判定された。まさに霞が関官僚の「忖度」が露呈した事件であり、安倍・菅体制の政治主導・官僚人事が、行政を大きくゆがめた典型例といってよいだろう。

拡大衆院予算委の証人喚問で、答弁する佐川宣寿・前国税庁長官=2018年3月27日

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筆者

星浩

星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト

1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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