平井大臣の「徹底的に干す」「脅しておいた方がよい」発言を看過してはいけない真の理由
単なる「言葉の問題」ではない政府・自民党の体質を端的に示す空恐ろしい事態
米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士
東京オリンピック(五輪)・パラリンピック向けに国が開発したアプリ(オリパラアプリ)の事業費削減をめぐり、平井卓也デジタル改革担当大臣が今年4月の内閣官房IT総合戦略室の会議で同室幹部らに、請負先の企業を「脅しておいた方がよい」「徹底的に干す」などと、指示していたことが報じられました(参照)。

官邸に入る平井卓也デジタル改革担当相=2021年6月11日午前
「単なる言葉の問題」か?
これに対して、平井大臣本人は「10年来一緒に仕事をして来て自分の真意が分かる幹部職員へ対面で檄を飛ばしたものであり、事業者への脅しでは決してありません」と弁明し(参照)、自民党の金子恭之議員が「我々国会議員は 血税の無駄遣いを許せないのは当然だと思います。平井大臣とは 初当選同期20年来の友人ですが、これまで平井大臣のキレた姿を見た事はありません。よほど腹に据えかねた発言だったのだと思います。これからも言葉遣いには気をつけて、怯むことなく頑張ってもらいたい」(参照)、日本維新の会の足立康史議員が「平井大臣仰る通り『契約見直しに当たっての自分の考えを、10年来一緒に仕事をして来て自分の真意が分かる幹部職員へ対面で檄を飛ばしたもの』であったなら、問題視すべきではありません。こんなリークで政治家が潰されるなら、内輪の会合でさえ何も言えなくなるし、政治リーダーが何人いても足りません」(参照)と擁護するなど、「相応の事情の下に」「内輪の席でなされた」発言についての「単なる言葉の問題」に過ぎないから問題ないという主張がなされています。
しかし、私は「徹底的に干す」「脅しておいた方がよい」という今回の平井大臣の発言は、仮にその言葉が「相応の事情の下に」、「内輪の席でなされた」ものであっても、「単なる言葉の問題」ですまされない、大きな問題を孕(はら)んでいると思いますので、この点を論じたいと思います。
問題の背景
最初に問題の背景を整理すると、本年の1月、政府はオリンピック・パラリンピックで来日する外国人の行動管理のために、顔認証機能を伴う「オリパラアプリ」の開発を競争入札で発注し、NECを含む共同事業体1社が応札、78億円で開発契約を結びました(参照)。
この78億円という金額は、接触確認アプリ「COCOA」の開発費約4億円の何と20倍にも相当し、当初からその妥当性が疑問視され問題となっていました(参照)。 ところが3月9日に政府が海外の一般客の受け入れ断念との方針が浮上し(参照)3月20日に正式決定する(参照)と、「無用の長物」「税金の無駄使い」との批判が一気に高まることになりました(参照)。
その結果、このオリパラアプリは契約済みであったにもかかわらず、5月31日に突如38億円と1/2以下に圧縮される契約に変更され、6月1日に発表された(参照)のですが、この時点でNECは顔認証機能の開発を終えていた(従って既に政府に対する費用請求権は発生している)と報じられていたことから、その不透明な契約変更の経緯が疑問視されていたところ、今回の報道になったものです。

NECのロゴ=NECのホームページより