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取り返しのつかない土地規制法案――参院で参考人として意見を述べました

国会は何のためにあるのか。立法事実もなく国民に大打撃の法案は廃案しかない

馬奈木厳太郎 弁護士

「官製風評」で不動産に大打撃。政府は冗談のような答弁

 まず、区域指定による影響や弊害についてです。

 注視区域については検討中とのことですが、特別注視区域に指定されると、重要事項説明義務が生ずるとされています。売買などの契約に先立って、宅地建物取引士の方が説明をすることになりますが、これは書面に「特別注視区域に指定されている」と書けばいいというものではありません。根拠法令を資料に付けたうえで、こんな会話が展開されることになるかもしれません。

「この土地は、土地利用規制法に基づく特別注視区域に指定されています」
「それってどんな法律ですか?」
「国民生活の基盤の維持並びに我が国の領海等の保全及び安全保障に寄与することを目的とする法律でして、土地等の利用実態を調査することになります」
「何のために調査するのですか?」
「重要施設に対する機能阻害行為を防止するためです」
「何かリスクがあるのですか?」
「リスクのあるなしも含めて調査します」
「調査内容はどんなことですか?」
「氏名や住所、その他政令で定めるものですが、なお必要があると認められるときは土地等の利用に関して資料の提出や報告を求められることがあります」
「誰が調査対象者なのですか?」
「利用者その他の関係者となりますが、利用者の定義はありますが、その他の関係者の定義はありません」
「いつ調査されるのですか?」
「権利変動の際といった限定がないので、恒常的に調査される可能性があります」
「調査されるときは何かお知らせがあるのですか?」
「そのような規定は設けられていません」
「どんな手法の調査なのですか?」
「手の内は明かせません」
「周りの人にも聞くのですか?」
「第三者からの情報提供の仕組みも検討中です」
「機能阻害っていうのは?」
「閣議決定において例示されますが、一概には申せません。でも、勧告を受けたらわかりますから大丈夫です」。

根拠欠落、現場感覚もない政府答弁

拡大     土地規制法案の仕組み
 冗談のように聞こえるかもしれませんが、これは政府答弁です。実際に、こんなやりとりをしたら、みなさんは買いたい、借りたいと思いますか?

 政府は、不動産に与える影響は少ないと、根拠もなく述べていますが、そんなに甘くはないはずです。

 当事者の立場で想像してみてください。自分が調査されるかもしれない、規制がかかるかもしれないところをわざわざ購入しますか。しかも、この法案は、政府の説明では安全保障上のリスクがあるから法整備しようという話なわけで、区域指定されると、その地域はリスクがあるという風に一般には受けとめられるのではないですか。

 さらに5年後には見直しもありうるわけで、そうするとさらに規制が増えるかもしれない。1キロだって1キロのままではないかもしれない。区域指定された地域にとっては大打撃です。どの程度のリスクかもはっきりしないところで、これは「官製風評」といわなければなりません。

拡大東京都心にある防衛省。周辺一帯は法案にある特別注視区域の対象となる可能性が高い=東京・市谷
 政府は、地元から不安の声があがっているといいますが、地元の人も、いやいやこんな内容は望んでないと仰るのではないですか。区域指定されることが当該地域に与える効果や影響について、法案もそうですが、これまでの質疑でも、現場感覚を伴ったやりとりがなされたとは到底思えません。実際に区域指定をする段になると、この内容のままでは、その地域からは猛反発を喰らうはずです。

 リスク、リスクと、あるかないかわからないものを見ようとしていますが、現場のリアリティは見えていないようです。

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筆者

馬奈木厳太郎

馬奈木厳太郎(まなぎ・いずたろう) 弁護士

1975年生まれ。大学専任講師(憲法学)を経て現職。 福島原発事故の被害救済訴訟に携わるほか、福島県双葉郡広野町の高野病院、岩手県大槌町の旧役場庁舎解体差止訴訟、N国党市議によるスラップ訴訟などの代理人を務める。演劇界や映画界の#Me Tooやパワハラ問題も取り組んでいる。 ドキュメンタリー映画では、『大地を受け継ぐ』(井上淳一監督、2015年)企画、『誰がために憲法はある』(井上淳一監督、2019年)製作、『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』(平良いずみ監督、2020年)製作協力、『わたしは分断を許さない』(堀潤監督、2020年)プロデューサーを務めた。演劇では、燐光群『憲法くん』(台本・演出 坂手洋二)の監修を務めた。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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