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取り返しのつかない土地規制法案――参院で参考人として意見を述べました

国会は何のためにあるのか。立法事実もなく国民に大打撃の法案は廃案しかない

馬奈木厳太郎 弁護士

拡大福島第一原発1~4号機(中央手前から)。1、3、4号機は水素爆発し、建屋の屋根や壁が吹き飛んだ=2011年3月24日午前、福島県大熊町、東京電力提供

なぜ原発が対象なのか。理由明かさぬ政府

 次に、これまであまり議論されていない原発についてです。

 生活関連施設として原発が検討されていますが、なぜ原発が対象になるのか理由が全く明らかにされていません。政府は、新規制基準を世界で一番厳しい基準だと豪語しています。新規制基準にはテロ対策も含まれていますから、世界で一番安全なはずです。まさか政府は新規制基準では足りないと考えているのですか?

 それから、原発との関係で機能阻害行為とは何を想定しているのですか? 

周辺住民は被害者、被害をもたらすのは施設。事故当事者の政府は考え改めよ

 この法案では、機能阻害というのは施設の外から人為的にもたらされる被害が想定されているようですが、原発については施設のなかから被害はもたらされています。

 被害者は、施設のなかの事業者や、事業者を監督する国ではありません。周辺住民が被害者なのです。

拡大福島県内の全ての避難所で希望者に被曝(ひばく)検査をすることになり、検査を受ける人の長い列が出来た=2011年3月15日、福島市
拡大人の気配がなくなった福島県双葉町の商店街。「原子力明るい未来のエネルギー」の看板がかかっていた=2011年4月25日

 原発によって阻害されるのは、ふるさとや地域との結びつきという機能であり、日常の生活や生業という機能です。そこを間違えないでいただきたい。

 住民を潜在的な脅威とみなすような考えは、事故を起こした当事者である国として、厳に戒められるべきです。原発に対する阻害をおそれるのであれば、その回答は住民を調査対象にすることではなく、原発をやめることです。


筆者

馬奈木厳太郎

馬奈木厳太郎(まなぎ・いずたろう) 弁護士

1975年生まれ。大学専任講師(憲法学)を経て現職。 福島原発事故の被害救済訴訟に携わるほか、福島県双葉郡広野町の高野病院、岩手県大槌町の旧役場庁舎解体差止訴訟、N国党市議によるスラップ訴訟などの代理人を務める。演劇界や映画界の#Me Tooやパワハラ問題も取り組んでいる。 ドキュメンタリー映画では、『大地を受け継ぐ』(井上淳一監督、2015年)企画、『誰がために憲法はある』(井上淳一監督、2019年)製作、『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』(平良いずみ監督、2020年)製作協力、『わたしは分断を許さない』(堀潤監督、2020年)プロデューサーを務めた。演劇では、燐光群『憲法くん』(台本・演出 坂手洋二)の監修を務めた。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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