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菅政権に見る官邸機能強化の功と罪 リーダーシップの在り方、再考の時

グリーン・デジタル・ワクチン/変化に愚鈍では世界に取り残される

花田吉隆 元防衛大学校教授

対コロナでも出遅れた安倍政権。日本社会の暗部か

 新型コロナウイルスのワクチン接種で日本は大きく出遅れた。なぜそうなったか、日本は十分反省しなければならないが、それはともかく、ようやく政府もここに来てワクチン接種の意味を理解し、一気に物事が進み始めた。

 一回接種した人は、65歳以上の高齢者で39.3%、総人口で15.8%(6月16日現在)になった。自衛隊による大規模接種も64歳以下に枠が広がり、一部企業では職場接種も始まった。職場と大学の接種がもっと本格化していけば、接種スピードはさらに加速されよう。

拡大築地市場跡地に設置された新型コロナワクチンの大規模接種会場で、傘をさして並ぶ人たち=2021年6月14日、東京都中央区
拡大新型コロナウイルスのワクチン接種対象年齢が64歳以下に引き下げられた自衛隊大規模接種センターで、接種を受ける女性=2021年6月17日、東京都千代田区

 なぜ、もっと早く手を打たなかったか、とは言うまい。やらないよりはましだ。何より、安倍政権の時の苦い思いを考えれば、格段の進歩に違いない。

 当時、安倍総理は、何度もPCR検査を拡充しなければならないと訴えたし、また、拡充すると明言した。国会でも発言したし国民にも約束した。それにもかかわらず、検査数が増えることはほとんどなかった。これほど不思議なことはない。

 一国の総理が、国民や国会に対し約束した。それにも拘らず事態が一向に改善されないことに、日本社会が抱える暗部を見た人も多かったのではないか。

拡大緊急事態宣言の解除について記者会見した安倍晋三・前首相。「日本モデルの力を示した」と語った=2020年5月25日、首相官邸

「動き始めた」ワクチン接種。悟った首相のリーダーシップ

 それを考えれば、今、とにかく接種が大車輪で進み始めたことは評価していい。何といっても物事が「動き始めた」のだ。

 こういう一連の動きが、総理のリーダーシップによることは否定しがたい。特にワクチン接種は、その成否が政権の命運を握るまでになり、総理自身、最早なりふり構っていられない、と悟ったようだ。

 接種に関与する大臣も、厚労相、経済再生相、ワクチン接種担当相の他、防衛相、総務相も加わり都合5名になった。河野太郎担当相の下には、総理から催促の電話が一日何度もかかってきたという。日本中が我先にと、ワクチン接種に沸き返っている。

官邸機能強化の改革が奏功

拡大橋本龍太郎首相の直属審議機関である「行政改革会議」は1996年11月28日、首相官邸で初会合を開き、中央省庁再編に向けた議論をスタートさせた
 現在の官邸は、その機能が格段に強化された。1990年代、国の権限が各省に分掌され、省あって国なしといわれた。その弊を改善すべく官邸の機能強化が叫ばれ、今の官邸が出来上がった。

 確かに、この改革は実を結んだ。グリーンもデジタルもワクチンも、もし、各省に権限が分掌され官邸の統括権限が弱いままだったら、一向に前に進むことがなかったかもしれない。その意味で、官邸の機能強化は大きな意義を持つ改革だった。

 しかし今、その弊害もまた指摘される。

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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