花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授
在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
グリーン・デジタル・ワクチン/変化に愚鈍では世界に取り残される
新型コロナウイルスのワクチン接種で日本は大きく出遅れた。なぜそうなったか、日本は十分反省しなければならないが、それはともかく、ようやく政府もここに来てワクチン接種の意味を理解し、一気に物事が進み始めた。
一回接種した人は、65歳以上の高齢者で39.3%、総人口で15.8%(6月16日現在)になった。自衛隊による大規模接種も64歳以下に枠が広がり、一部企業では職場接種も始まった。職場と大学の接種がもっと本格化していけば、接種スピードはさらに加速されよう。
なぜ、もっと早く手を打たなかったか、とは言うまい。やらないよりはましだ。何より、安倍政権の時の苦い思いを考えれば、格段の進歩に違いない。
当時、安倍総理は、何度もPCR検査を拡充しなければならないと訴えたし、また、拡充すると明言した。国会でも発言したし国民にも約束した。それにもかかわらず、検査数が増えることはほとんどなかった。これほど不思議なことはない。
一国の総理が、国民や国会に対し約束した。それにも拘らず事態が一向に改善されないことに、日本社会が抱える暗部を見た人も多かったのではないか。
それを考えれば、今、とにかく接種が大車輪で進み始めたことは評価していい。何といっても物事が「動き始めた」のだ。
こういう一連の動きが、総理のリーダーシップによることは否定しがたい。特にワクチン接種は、その成否が政権の命運を握るまでになり、総理自身、最早なりふり構っていられない、と悟ったようだ。
接種に関与する大臣も、厚労相、経済再生相、ワクチン接種担当相の他、防衛相、総務相も加わり都合5名になった。河野太郎担当相の下には、総理から催促の電話が一日何度もかかってきたという。日本中が我先にと、ワクチン接種に沸き返っている。
現在の官邸は、その機能が格段に強化された。1990年代、国の権限が各省に分掌され、省あって国なしといわれた。その弊を改善すべく官邸の機能強化が叫ばれ、今の官邸が出来上がった。
確かに、この改革は実を結んだ。グリーンもデジタルもワクチンも、もし、各省に権限が分掌され官邸の統括権限が弱いままだったら、一向に前に進むことがなかったかもしれない。その意味で、官邸の機能強化は大きな意義を持つ改革だった。
しかし今、その弊害もまた指摘される。
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