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G7は再び世界をリードしていけるか? 対中警戒感から久々に示した結束

バイデン政権は同盟の亀裂修復に成功。問われる日本の外交力

花田吉隆 元防衛大学校教授

拡大G7サミットのセッションに臨む(左端から時計回りに)メルケル独首相、マクロン仏大統領、ジョンソン英首相、バイデン米大統領、トルドー・カナダ首相、ドラギ伊首相、フォンデアライエン欧州委員長、EUのミシェル首脳会議常任議長、菅義偉首相=2021年6月11日、英国・コーンウォール

「G7不要」の時代を越えて

 久々の主要7カ国首脳会議(G7サミット)の復活だ。このところ地盤沈下が著しかったG7だが、英コーンウォールを舞台にした今年のサミット(6月11~13日)で、改めて世界に存在感を示した。

 かつて、G7不要論が唱えられたことがあった。1987年には世界のGDPの7割をこの7カ国が占めるほどだったが次第に後退、今ではわずか4割にまで減少した。2000年代には、代わって台頭してきた新興国の参加なしに、最早、グローバルな課題解決は困難だった。

 それがはっきり意識されたのが、2008年のリーマンショックの時だ。米国に端を発したサブプライムローン問題により世界の金融市場は機能不全に陥ったが、解決策は最早G7だけで見つけ出すことはできなかった。

 急遽、ブラジル、ロシア、インド、中国のBRICs等が招集され、20カ国、地域首脳会議(G20サミット)が開催された。そこで合意されたグローバル規模の財政支援策により世界経済は奇跡的にV字回復を果たし、世界はすんでのところで大混乱を回避した。

亀裂うんだトランプ時代から続く対中強硬姿勢

拡大2017年のG7サミットは、トランプ米大統領が「自国第一」を掲げ、前年までG7首脳が協調して国際社会を主導した自由貿易、温暖化対策、難民などのテーマで衝突。米は閉幕後にパリ協定からの離脱を表明した。写真はG7拡大会合で意見を交わすトランプ氏とメルケル独首相=2017年5月27日、イタリアのタオルミナ
拡大2018年のG7サミットでは、首脳宣言がまとまり閉幕した直後にトランプ米大統領が「承認しない」と表明し、混乱した。写真は首脳会議会場を出るトランプ氏=2018年6月9日、カナダのシャルルボワ

 昨年までの問題は米国だった。トランプ前大統領の自国第一主義は、G7の枠組みに大きな亀裂をもたらした。2019年に行われたサミットは、わずか1ページの首脳宣言をまとめることしかできなかった。

 新たに誕生したバイデン政権にとり、主要な外交問題が中国であることはトランプ時代と変わらない。むしろ、2022年の米国の中間選挙を考えれば、バイデン政権はトランプ氏以上に対中強硬姿勢をアピールしなければならないかもしれない。多くの政策で脱トランプ色を強めるバイデン大統領だが、こと中国に関する限り、よって立つ立場はトランプ氏と同じだ。

同盟国と協調目指すバイデン政権

拡大バイデン米大統領(archna nautiyal / Shutterstock.com)
 しかし、バイデン氏とトランプ氏で大きく異なる点がある。同盟国と協調していくかどうかだ。バイデン大統領は、同じ中国に対峙するにしても、まず、自陣営を固めてからと考える。中国と単独で戦うのでなく、民主主義陣営の総力で立ち向かおうとする。この基本戦略の下、まず日米豪印のクアッド首脳会議が開かれ、続いて日米首脳会談、今回のG7会合と続き、NATO首脳会議に至る。

 しかし、西側同盟を修復するといっても、米欧の立場は微妙に違う。双方の間には、特に対中国政策を巡り少なからず温度差がある。総論では、中国の脅威や人権、法の支配の尊重で一致しても、各論になると、欧州は中国を過度に刺激するのは避けたいというのが本音だ。バイデン大統領として、こういう欧州を如何に対中戦略で一つにまとめ上げるかが今回の会談の焦点だった。


筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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