メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

G7は再び世界をリードしていけるか? 対中警戒感から久々に示した結束

バイデン政権は同盟の亀裂修復に成功。問われる日本の外交力

花田吉隆 元防衛大学校教授

経済的理由から対中強硬論に慎重な独と伊

拡大ドイツのメルケル首相(右)と習近平中国国家主席=2017年7月7日、ドイツ・ハンブルク
 欧州の中で対中強硬論に最も慎重なのがドイツとイタリアだ。

 メルケル独首相の親中姿勢は際立っている。背景にドイツ産業界の意向がある。ドイツ産業界にとり、中国マーケットはそれほど重要で、特に自動車業界はその輸出の4割を中国市場に依存している。

 経済的理由から対中強硬論と一線を画したいのは、イタリアも同じだ。2019年、イタリアは中国と覚書を交わし一帯一路プロジェクトに参加したが、これはEU主要国の中で初めてのことだった。当時、中国の手がついにEUの中核にまで伸びたと言われた。

 イタリアが中国に接近する理由は明らかだ。ユーロ導入以来、イタリア経済の成長はほぼなかったといっていい。では、財政政策でテコ入れするといっても、財政は火の車でとてもその余裕はない。結局、安易ながら、中国が差し出す資金にすがる以外手がない。

 これに対し、中国がイタリアを攻略する意味は大きく、欧州大陸の玄関口たるイタリアをまず手中にし、そこからバルカン諸国、中東欧諸国へと、欧州大陸内部に手を伸ばしていくことができる。

拡大中国の習近平国家主席とイタリアのコンテ首相。両国はこの日、「一帯一路」に参画する覚書に署名した=2019年3月23日、ローマ(Alessia Pierdomenico / Shutterstock.com)

地理的に中国と離れた欧州の皮膚感覚の違い

 しかし、欧州が対中強硬姿勢に慎重なのは経済的理由からだけではない。むしろ、中国の脅威を如何に認識するかについての違いが米欧の立場の差を生んでいる。

 欧州にとり、中国の脅威は「差し迫ったもの」でなく、いくら米国が中国脅威論を主張しても「そこまでではない」というのが欧州の一般的な感覚だ。米国が、「中国を国際社会に巻き込み、責任あるステークホルダーにしようとの目論見は完全に失敗した」と言っても、欧州は「まだ可能性は残っている」と反論する。

 かつてソ連に対峙して冷戦を戦った欧州にすれば、ソ連と中国の脅威の差は歴然だ。ソ連は、現実の脅威であり、中国は、頭の中の脅威に過ぎない。ソ連と欧州西側諸国との間には遮るものもなく、地続きの平原がずっと広がっているだけだ。地上戦闘能力で圧倒的に勝るソ連軍が万一侵攻してくるようなことがあれば、欧州の被害は計り知れない。

 これに対し、中国が如何に脅威と言っても、それは遠く地理的に離れた場所のことであり、脅威を肌で感じるというにはほど遠いのだ。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

花田吉隆の記事

もっと見る