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着実に進むバイデン米大統領の「価値観外交」。中国への影響は

「専制主義国家vs民主主義国家」の構図は世界に何をもたらすか?

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

「専制主義国家vs民主主義国家」の対立構図

 バイデン大統領は現在、国際社会が「専制主義国家vs民主主義国家」という対立構図になっていると主張している。これは有力で共鳴できる見解だと思う。

 かつて「ヒトラーの時代」を経験しているドイツ国民は、専制主義や人権抑圧には他国民より過敏に反応する。それだけに、香港、ウイグル、台湾、そしてミャンマーの行方に、強い関心と憂慮を抱いているだろう。そして、経済力や軍事力によって強引に現状を変更しようとする国があれば、それに敢然と立ちはだかるだろう。

米中にとって重要なこれからの1年半

拡大バイデン米大統領=2021年4月22日、米国務省ウェブサイトの中継動画から
拡大中国の習近平(シー・チン・ピン)国家主席=2021年4月22日、米国務省ウェブサイトの中継動画から

 さて、米中両国の指導者にとって、これから来年末にかけての1年半は、死活的に重要な時期になっている。両国が同時期に並行して変更できない重大な政治日程を迎えるからだ。

 中国はこの7月に、中国共産党結成100周年を迎える。来年10月には5年に一度の共産党大会が開かれ、国家主席などが選任される。主席については、すでに規約が変更され、現在の習近平主席が三選される見通しだと言われている。

 一方、米国では、来年11月に上下両院の中間選挙が実施される。そこで今は民主党が過半数を占める両院の議席を維持・拡大することが、バイデン大統領にとっての至上課題である。仮に中間選挙で敗北することになれば、残る2年の任期は「レームダック化」が避けられない。

 そう考えると、バイデン大統領はこれからの1年余の任期中、全速力で動いて大きな成果をあげる必要がある。菅義偉首相との4月16日の日米首脳会談は、この“全力疾走”の出発点として位置づけられていたのではないか。この会談で出された共同声明に、「台湾」と「人権」という言葉が盛り込まれたことで、バイデン大統領の挑戦の目標と覚悟が決まったのだと思う。

 バイデン大統領はサミット後、トランプ大統領の任期中、疎遠になっていたEUやNATOとも関係を修復。NATOの共同声明には「中国の野心と強引なふるまいは国際秩序への挑戦だ」という強い姿勢を打ち出した。

 この秋には、いよいよ中国も参加をする主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット、10月)やアジア太平洋経済協力会議(APEC、11月)が控えている。今やG7の主張に格上げされた感のある価値観外交が、第3幕となる米中同席の二つの重要な会議でどう扱われるかが大いに注目される。この会議で、武漢ウイルスの徹底した再調査が提案されることもありうるだろう。この第3幕はバイデン大統領の長い政治生活の中でも最大、最重要の舞台と言える。

専制主義国家の内情が外から見える時代に

 ところで、バイデン大統領の「専制主義国家vs民主主義国家」の対立の構図は、一歩踏み込んでみると、やや異なる実態も見えてくる。

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官 福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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