衆院選ムードが高まる国政。野党はどれだけ議席を獲得できるのか
2021年06月26日
通常国会が延長なく閉幕し、今期限りで政界を引退する衆院議員の発表や、衆院議員本人による街頭演説が始まったというニュースが、目につくようになりました。東京都議会議員選挙や東京五輪・パラリンピックといったイベントはあるものの、国政は秋の衆院選に向けて一気に加速していくことになります。
自民党への逆風が強まる気配も漂うなか、世間の注目は野党がどれだけ議席を獲得できるかになります。小選挙区はまさに候補者調整が大詰めの段階ですが、その調整こそが野党共闘成立のカギを握ることは明らかです。
平河エリ氏が「論座」に寄せた「『野党共闘』の新しいフェーズ」は、実際に衆院選を戦う現場の人たちにとって、今が名より実を取るフェーズであることを示すとともに、選挙戦はウイングの広さが重要であることを示唆する重要な論考です。
ここ数年の野党共闘に向けての紆余曲折の動きや駆け引きについては、この平河氏の稿を読めば一目瞭然なので、筆者はこれから数カ月の間に「野党共闘」が成功するために必要な三つの条件と、衆院選の展望について述べたいと思います。
第一の条件は、保守分裂の小選挙区で勝ち抜く覚悟を決めることです。
筆者は選挙プランナーとして様々な選挙に携わり、マスメディアの取材も受けますが、なかでもマスメディアが興味を持つのは、与党の候補者が分裂している「保守分裂」の選挙区です。今の段階で自民党内の公認争いが発生している小選挙区はおおよそ10。二階派が絡むケースが多いのが特徴で、最近では山口3区の「河村建夫氏vs林芳正氏」という“大物対決”が話題となっています(ここも河村氏は二階派です)。
戦いの構図は、「現職同士」や「現職対新人」といった違いがあり、同じタイミングですべての公認決定がなされるとは考えにくい状況ですが、遅ければ公認決定が8月から9月頭ごろまで延びるのでは、との観測が絶えません。最終的には、公認権や予算権を握る二階幹事長を中心とした選挙戦となるわけですから、その責任も二階幹事長が一手に引き受ける形になるはずです。
小選挙区を野党が抑えている高知2区や鹿児島1区などはもちろんのこと、自民が小選挙区を抑えている静岡5区や群馬1区で与党候補者が分裂する形で立候補し、かつ野党候補者が勝ちきれることができれば、自民党内の調整不調による議席減となり、保守分裂の原因をつくった二階幹事長の責任論が必ず噴出することになります。
実際には、静岡5区は細野豪志氏が優位と言われており、群馬1区も保守王国の中心地として野党が簡単に議席を獲得できる状況ではありません。新潟1区、新潟2区でも同様の構図となっているほか、徳島県や宮崎県でも公認候補者と地元県連とのすれ違いが発生するなど、保守分裂含みの動きとなっていますが、こうした選挙区に野党側が資源を集中投下して勝ちきることができるのかどうかが、鍵となるでしょう。
与党側からすれば、分裂したまま選挙戦に突入し、小選挙区を奪われるのは望ましくないことは明らかです。例えば(前回の)山梨2区のような実質的に保守分裂の(追加公認型の)選挙であれば、結果的に片方が当選するために問題ありませんが、そこに野党候補者が擁立されれば、2人とも比例復活できずにバッヂを失う可能性もあります。
第二の条件は、前提なしで共闘をすることです。
あまりにも暴論だと思われるかも知れませんが、総選挙で勝つための野党共闘を実現するためには、「無条件の野党共闘」を組めるかどうかも、考えなくてはならない課題です。
野党共闘を政策論議から始めれば、安保法制、消費税、コロナ対策、コロナ関連経済対策、憲法改正論議、連立などの諸課題が山積みです。衆院選は政権選択選挙であるため、政権交代が実現した場合の組閣に、各党がどのように関与するのかといった問題は、切っても切れない問題でしょう。
ただ、こうした政策論議を待っていては、選挙の時期がほぼ見えているなか(普通、解散総選挙は突然やってきます)、野党がそのメリットを生かせません。これらの論点を各党のトップで決めていくプロセスは当然必要な過程であり、否定するつもりはありませんが、そのために現場の準備が遅れて短期決戦になれば、それだけ野党共闘の結束力を深める準備期間が短くなります。
先述の平河エリ氏の記事にも「一本化しなければ野党にとってチャンスがないという現場レベルの現実的判断」「『片目をつぶって』選挙で勝てる構図を作ることを優先」というフレーズがありましたが、選挙に強い支持基盤を持つ地域においては、共闘態勢の構築を着々と進めるしかない段階に入っています。この現実的な選択を全国的に広げられるかどうか、またその旗振り役を立憲や共産の選対が(政策論議とは別の次元で)担えるかどうかが、野党共闘実現の鍵と言えるでしょう。
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