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コロナ対策の“優等生”と賞された台湾、その真相と深層(下)

台湾をみる目はなぜ曇るのか

甘粕代三 売文家

コロナ対策の“優等生”と賞された台湾、その真相と深層(上)

 「台湾にコロナウィルスは殆ど入っていなかった可能性が高いんだ」

 台湾の著名コラムニスト、Wから驚天動地の連絡が来た。

 台湾地上波テレビ局キャスター出身のWは台湾主要紙にコラムを持ち、蔡英文民進党政権の諸施策を厳しく批判している。特にコロナ禍に関する施策、そして日本では天才IT大臣としてアイドル並みの人気を博している唐鳳(オードリー・タン)、コロナ対策の最前線に立ち台湾住民の信頼を勝ち得て鉄人大臣の異名まで取った衛生福利部長・陳時中に対しても厳しい批判を繰り返してきた。

インタビューに応じる、台湾の唐鳳・デジタル担当政務委員=2021年1月7日、台北、熊谷俊之氏撮影インタビューに応じる、台湾の唐鳳・デジタル担当政務委員=2021年1月7日、台北、熊谷俊之氏撮影

習近平総書記が最大の功労者?

 「台湾がコロナ対策の優等生と世界中から賞賛を集めた最大の功労者は、習近平以外の誰でもない」

 Wは驚くべき見解を示す。2019年8月1日、中国共産党総書記・習近平の号令一下、大陸人民の台湾自由旅行(個人旅行)が停止されたことが台湾をコロナ対策の“優等生”に押し上げたというのである。

 台湾では2020年1月11日に総統選挙と立法院選挙が行われ、民進党の蔡英文の再選阻止を狙った大陸は大陸人民の台湾自由旅行を停止し、それまで大陸観光客を大の得意にしていた観光業界を干上がらせて再選を阻もうとしたのだ。大陸の伝統的手法、“以経囲政(経済を以て政治を包囲する)”である。

台湾当局が動く前に人流は減っていた

 台湾への自由旅行は馬英九時代の2011年に解禁され、台湾への訪問観光客は2014年には418万人に達した。その後は漸減傾向にはあるものの、国別では依然として日本を引き離しトップの座を占めてきた。

 自由旅行停止後も、7月末日までにビザなどの手続きが完了していれば3か月の猶予期間が設けられ、2019年末までの入台は認められていた。それでも、停止直後の2019年8月の台湾入境者は7月よりも4万減の28万2999人、その翌月には11万人台にまで落ち込み、年明けの2020年1月には10万人の大台を割り込んで9万1085人。一日平均3000人にまで落ち込んでいた。

 武漢で集団感染した肺炎を新型コロナウィルスによるものと中国政府が公表したのが1月9日。そして2月7日、台湾当局が大陸籍所有者と、過去14日間に大陸、香港、澳門に滞在した外国籍所有者を入境禁止とし、香港・澳門籍所有者には入境後14日間の在宅検疫を科して台湾海峡両岸の人的交流を全面的に停止した。だが、2月7日にその措置をとる前に、大陸からの人流は大幅に減っていたことが前掲の大陸からの入境者数で確認できる。

水際対策前に入っていたか? 日台の違い

 日本は当時の首相・安倍晋三が旧正月(2020年は1月25日)を前に覚えたての中国語で旧正月長期休暇の来日を訴えていたが、台湾は習近平の号令一下、大陸からの人流が激減し、日本とは全く状況が異なっていた。

 2月7日以前に大陸からの人流が減って

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