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夫婦同姓合憲、LGBT「理解増進」法案も進まぬ日本と欧米の大きな隔たり

総じて評判が悪い夫婦同姓合憲判決。LGBTに対する見方も大きく異なり……

山口 昌子 在仏ジャーナリスト

「家族」とは何なのか?

 先述したように、日本ではLGBTなど性的少数者をめぐる「理解促進法案」ですら、自民党は国会への提出を諦めている。党内に根強い反対者がいるためだ。「夫婦別姓」も、自民党内に根強い反対者は「違憲」判決にホッとしたという。反対者の主張を要約すると、「家族制度の崩壊」ということになる。

 だが、今の時代、そもそも「家族」とは何なのか?

 たとえば、日本では2019年、約4500人が孤独死(厚生労働省)、認知症の行方不明者は延べ約8万7000人にのぼり、460人が死亡している(警視庁)。いずれも年々、増加傾向にあるという。

 もちろん、手を尽くして何年も行方不明の身内を探す家族がいることは確かだ。孤独死の場合も、社会制度の不備など様々な理由が背後に隠されており、身内だけを責められないとは思う。しかし、日本で今、家族の絆が確実に薄くなっているのではないかと感じざるを得ない時がある。

 フランスはどうだろうか。フランス人の友人を週末に自宅での夕食に招待しようとすると、「今度の日曜には両親(母、あるいは父の場合もある)が夕食にくるから残念ながらダメ」とか、「土曜は実家で夕食」「今度の終末は夫の実家に行く」などなどの返事が返ってくることが多い。週末は完全に「家族デー」だ。

 夏の長期バカンスの季節になると、離婚したモト夫婦が新しい相手とそれぞれの子連れで田舎の一軒家などを借りて過ごすなど、「再生家族」が仲良くしている例も珍しくない。週末にモト夫が子供を迎えに来て、一緒に過ごす例は多い。

 日本ではフランス人は「個人主義」などの通念があるが、これはまったくの誤解だ。むしろ、フランス人は「家族主義者」といえる。

拡大Tomsickova Tatyana/shutterstock.com

別れた日本の子どもに会えないフランスのパパ

 日本が「ハーグ条約」()に加盟する以前、日本人の妻がフランス人の夫と離婚した場合、子どもの親権をめぐって様々な悲劇が起きた。フランスは離婚後も親権が父母の両方にある共同親権だが、日本では子供の親権は父母のどちらか一方に与えられるからだ(母親に与えられる場合が多い)。

:国際的な子の奮取の民事上の側面に関する条約。国境を超えて子どもが不法に連れ去られたり、不法に留め置かれたりした場合の、子どもの返還手続きや面会交流について定める。1980年に成立。日本は2011年加盟、14年発効

 ハーグ条約の存在を知らずに離婚した日本人妻が、夫に通告せずに無断で子供を連れて日本に帰国した場合、「誘拐罪」に問われても文句は言えないのだが、実際には、フランスからはるばるやってきた父親と子どもとの「面会」を拒否したり、日本的“潔癖さ”のゆえか、子どもあてに送られてきた誕生日やクリスマスのカードやプレゼントをすべて送り返したり、という例も珍しくなかった。

 かくて、フランスをはじめ米英などで、「子どもに会いたい父親」による国際組織「SOSパパ」が誕生した。

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筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在仏ジャーナリスト

元新聞社パリ支局長。1994年度のボーン上田記念国際記者賞受賞。著書に『大統領府から読むフランス300年史』『パリの福澤諭吉』『ココ・シャネルの真実』『ドゴールのいるフランス』『フランス人の不思議な頭の中』『原発大国フランスからの警告』『フランス流テロとの戦い方』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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