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田中均が分析する「米中対立はどのような道筋をたどるのか」

今後30年の世界を左右する「牽制と抑止」「競争と排除」「相互依存と協力」の行方

田中均 (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

短期的には厳しく対峙、中長期の帰趨は中国の経済展望次第

 今後、米中対立は短期的には引き続き厳しい対峙が目立つことになるのだろう。クアッド、日米首脳会談、米韓首脳会談からG7を経てバイデン大統領が目指した主要パートナーとの対中連携は成功していると見ることが出来よう。

 これまで中国を市場としてみる傾向が強く、戦略的な脅威とは見てこなかった欧州も、香港での「一国二制度」の空洞化や新疆ウイグル自治区での人権圧迫を目の当たりにして、対中制裁措置のほかEU中国の投資協定の欧州議会での承認凍結に至り、今次G7の首脳宣言では中国に対する懸念を明確に示すことに同調した。

 それでも欧州は一枚岩ではなく、中国は独や仏さらには10月末に行われるG20の議長国である伊への働き掛けを強め、米国と分断しようとするのだろう。

 中国が先進民主主義国との関係で短期的に最も神経質となっているのは新型コロナウイルス発生源の調査問題の再燃と、2022年2月に開催が予定される北京冬季五輪ボイコット問題だ。中国はWHOとの関係では調査団を受け入れ、調査問題を一段落させた後、マスクなどの医療資材やワクチンの支援を軸とする活発な医療外交を展開し、中国の名誉挽回に必死となったが、再び米国主導で問題が蒸し返されることを極度に警戒する。

 北京冬季五輪については米国の呼びかけは外交的ボイコットにとどまり、政府要人を含む代表団を北京に送ることをボイコットするという趣旨であろうが、来年秋の共産党大会に向けて任期の延長を狙うと見られる習近平政権には手痛い失点となりうる。それを意識して中国は今夏の東京五輪には高いレベルの代表団を送るつもりなのであろう。

 中長期的には米中対立の帰趨は中国の経済展望次第だろう。経済的に見ても米国は基軸通貨ドルを持ち、経済の圧倒的なダイナミズムや、バイデン政権下でのインフラや科学技術への膨大な財政資金の投下などを含め有利な立場にある。

 一方中国は安価な労働賃金のメリットが失われつつあるとともに、先日発表された国勢調査でも明らかなように、既に高齢化社会(60歳以上が人口の18.7%に達する)が進んでおり、生産年齢人口の急速な減少は生産性を低めていくだろうし、従来のような高い経済成長は見通せない。共産党の統治の正統性はこの30年経済成長に求められてきたわけで、成長率が大幅に減速する展望の中で、成長阻害要因を取り除くべく対外姿勢も軟化させる可能性がある。

 米中摩擦の結果ハイテク部品の調達が限られてくること、アリババなどの巨大企業に共産党の介入を強めていく結果ダイナミズムが失われていく事、中国との経済関係に国際社会の警戒心が高まっていく事などは経済成長阻害要因であろう。

拡大副大統領だったバイデン氏と、訪中の歓迎式典に出席した習近平国家副主席(当時)=2011年8月18日、北京
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筆者

田中均

田中均(たなか・ひとし) (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

1969年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官(96-98)、在サンフランシスコ日本国総領事(98-2000)、経済局長(00-01)、アジア大洋州局長(01-02)を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、2005年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、2010年10月に(株)日本総合研究所 国際戦略研究所理事長に就任。2006年4月より2018年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、2019年11月10日刊行)、『日本外交の挑戦』(角川新書、2015年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、2009年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、2009年)など。2021年3月よりTwitter開始、毎日リアルタイムで発信中。(@TanakaDiplomat)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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