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習近平総書記演説 米国への「対決宣言」の狙いと背景~中国共産党100周年

台湾問題は譲らない 共同目標は祖国の完全統一  国民との一体感を強調

藤原秀人 フリージャーナリスト

香港の「一国二制度」は軽視

 中国共産党は1921年7月23日から初の党全国代表大会を開いた。「7月1日」はきりがよいこともあって、のちに決められた“誕生日”だ。香港返還の記念日と重なる。

 香港では返還記念日のこの日、民主派による共産党に抗議する集会が開かれてきたが、今年は禁じられた。国家分裂や国家政権転覆、テロ活動、そして外国勢力と結託して国家の安全を害する行為を処罰する「香港国家安全維持法」が、香港議会の審議を経ずに中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会で可決、去年の6月30日に施行された。それ以後、北京の意向に沿わぬ活動は、禁止される前に自粛するケースが増えている。林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は北京の式典に出席した。

拡大香港では中国への返還24周年を記念する政府主催の式典が開かれ、共産党100年も祝福した=2021年7月1日、香港

 香港をめぐっては、米国や旧宗主国の英国などから中国に対する批判が続くが、習総書記は演説で「中央の全面的な管轄権を実行する」と語った。香港住民による統治を掲げた「一国二制度」を軽視するかのように、外国からの批判を一蹴した。

 アヘン戦争に敗れて英国に奪われた香港は1997年に中国に復帰した。毛沢東に続く第二世代の最高指導者、鄧小平が英国のサッチャー首相(当時)と返還に合意し、第三世代の指導者、江沢民元総書記が返還式典に臨んだ。

「台湾統一」は習氏のライフワーク

 一方、台湾については、鄧氏が「平和統一」を目指したがかなわず、江氏はミサイル演習に至る台湾海峡危機を招いた。その後の胡錦濤氏は共産党と対立してきた国民党とのトップ会談を実現させた。

 台湾対岸の福建省で長年勤務し、総書記就任後の2015年11月に当時の馬英九総統とシンガポールで歴史的なトップ会談をして「一つの中国」の原則を確認した習氏にとって、台湾問題はライフワークであり、統一はこれまでの指導者がかなえることができなかった、是非とも実現したい夢である。そのために総書記の任期延長を狙っている、との見方もあるほどだ。

 返還を果たし、中国の特別行政区となった香港とは違い、台湾は共産党が建国した中華人民共和国の統治がずっと及ばぬ「不可分の領土」である。

 「台湾問題を解決し、祖国の完全統一を実現することは、中国共産党の永久に変わらぬ歴史的任務であり、中華の人々全体の共通の願望だ」。習氏はこの日の演説でこう語った。

 私は長年、「台湾統一」について、大陸と台湾の人々を取材してきた。台湾の民意が統一から離れる一方、大陸は「統一したい」でブレはほとんどなかった。共産党は経済成長を続けることで民心を掌握してきた。豊かになり、価値観も多様になるなかでも、「台湾統一は民心を束ねる夢だ」という声は根強く、「中国人には台湾問題に介入する米国が統一の最大の障害と見える」(北京大学教授)。

拡大David Carillet/shutterstock.com

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筆者

藤原秀人

藤原秀人(ふじわら・ひでひと) フリージャーナリスト

1980年、朝日新聞社入社。外報部員、香港特派員、北京特派員、論説委員などを経て、2004年から2008年まで中国総局長。その後、中国・アジア担当の編集委員、新潟総局長などを経て、2019年8月退社。2000年から1年間、ハーバード大学国際問題研究所客員研究員。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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