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首相が気にするべきは、GDPや株価より、ジニ係数と幸福度だ

経済成長が目的化し、国民を幸福にしなかったアベノミクスに代わる道

山内康一 前衆議院議員

 安倍前総理は政権運営にあたって株価や経済成長率をたいへん気にしていました。アベノミクスには「経済成長至上主義」という批判もありました(その割には経済成長率は高くありません)。

 しかし、一国の宰相が気にすべきなのは、株価や経済成長率、GDPの規模ではなく、貧困と格差の状況を示すジニ係数や「世界幸福度調査」の指標だと私は思います。

G7で最も「不幸」な国、日本

 言うまでもありませんが、経済成長は「手段」であって「目的」ではありません。アベノミクスは株価とGDP増加がそれ自体で「目的」になり、その結果として所得格差が広がり、国民の幸福度の向上に貢献しませんでした。

幸福度上位10カ国とG7各国(世界幸福度報告2021から)拡大幸福度上位10カ国とG7各国(世界幸福度報告2021から)
 国際連合の「持続可能な開発ソリューションネットワーク」が実施する「世界幸福度調査」によると、残念ながら日本人の幸福度は高くありません。2021年の日本の順位は56位でした。2010年代前半は40位台でしたが、その後は50位台、60位台をさまよっています。日本はG7のなかで最下位です。主要先進国のなかでもっとも不幸な国とも言えます。自殺率も高い方です。国民が幸福を感じられないのは、政治に責任があります。

 世界幸福度ランキングは、1位フィンランド、2位デンマーク、3位スイス、4位アイスランド、5位オランダと北欧諸国が上位を占めています。高福祉高負担の北欧諸国の幸福度が高いことは示唆的です。低福祉低負担の「小さな政府」よりも高福祉高負担の「大きな政府」の方が、国民が安心して暮らせて、幸せを感じやすいということだと思います。

かぎは「負担に見合う見返り」を感じられるか

 橘木俊詔氏(京都女子大学客員教授、元京都大学教授)は次のように指摘します。

 「特に幸福度が高いのは、フィンランド、デンマーク、ノルウェーなどの北欧諸国である。これらの国は福祉国家として有名であり、福祉制度、社会保障制度の充実ぶりが人々に安心感を与えており、それを高く評価していると考えてよい。重要なことは、北欧諸国については、福祉の充実は国民に多額の税・社会保険料の負担を強いるが、国民は負担はしてもそれへの見返りが大きいと、政府を信頼しているのである。」

 負担に見合う見返りを実感できないのが日本の問題です。まずはベーシックサービス(医療、介護、障がい者福祉、保育、教育など)を充実させて、所得に関係なく誰もがベーシックサービスに平等にアクセスできるようにすることが、安心につながり幸福度を高めると思います。


筆者

山内康一

山内康一(やまうち・こういち) 前衆議院議員

 1973年福岡県生まれ。国際基督教大学(ICU)教養学部国際関係学科卒。ロンドン大学教育研究所「教育と国際開発」修士課程修了。政策研究大学院大学「政策研究」博士課程中退。国際協力機構(JICA)、国際協力NGOに勤務し、インドネシア、アフガニスタン等で緊急人道援助、教育援助等に従事。2005年衆議院議員初当選(4期)。立憲民主党国会対策委員長代理、政調会長代理等を歴任。現在、非営利独立の政策シンクタンクの創設を準備中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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