メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

質の高い議員を選ぶために 衆議院選挙に「予備選挙」の導入を

小選挙区制の弊害是正へ「質の改革」が最優先。定数だけが問題ではない

登 誠一郎 元内閣外政審議室長

有権者の選択肢は狭いまま 密室での候補者選定

 他方、小選挙区制導入に際し、前記②の難点は救済されなかった。この点に関し、有権者目線の候補者提示方法を実現するための有効な手段は、各主要政党が、候補者を決めるにあたり、党内の予備選挙を行うことである。

 現在のように、党本部の選対責任者が密室で(必要に応じて当該都道府県の執行部との間で話し合いにより)候補者を一人に絞ることは、非民主主義的であり、最善の候補者が提示される保証はない。それに比して、米国などで広く実施されている主要政党内での予備選挙は、全党員が候補者選定に関与できるものであり、完璧な制度ではないとしても、民主主義により近い制度といえよう。

富山市長選で自民が予備選実施、党員は6人から選択

拡大今年の富山市長選では、自民党が6人から1人の推薦候補を決める予備選挙を実施。合同で街頭演説や立会演説会、記者会見などをした。写真は公開討論会=2021年1月26日
 今まで日本の国政選挙で予備選挙が実施されたことはないが、地方の首長選挙としては、今年1月に行われた富山市長選挙における自由民主党予備選挙の例がある。

 これは、名乗りをあげた6人について、同市在住の党員が投票し、党員投票40%、議員投票40%、世論調査票20%の比率で党の推薦候補者を決定する仕組みであった。この結果選出された候補者は、市長選挙において圧勝したが、党員の有権者は、執行部から一方的に提示された候補者ではなく、自らが予備選挙で選んだ候補者に投票出来た次第である。

 なお、過去の自由民主党総裁選挙においても予備選挙は何度か行われたが、これは、党の候補者を直接決める選挙ではなく、都道府県ごとの獲得票数を決めるためのものであるので、いささか意味合いが異なる。

山口3区など各地で激化する公認争い 次々回から予備選導入を

 今秋までに行われる次回衆院選においては、いくつかの選挙区において自民党内で激しい公認争いが予想されている。具体例を挙げると、山口3区の自民党の公認候補者を、現職の河村建夫・元官房長官とするか、あるいは参議院議員からの鞍替えを狙う林芳正・元文部科学大臣にするかである。

 現在の制度では党本部がそれを決めることとなり、河村元官房長官は78歳と高齢であるが、幹事長派閥の重鎮であるので、「現職尊重」の慣例により有利とみなされている。他方、林元文科相(農水相、防衛相なども歴任)は将来の総理候補と取りざたされており、県民の人気は根強いが、自民党の公認候補となれなければ、無所属での出馬の可能性が高いとみられている。また冒頭に掲げた衆議院定数の10増10減により、次々回の選挙からは、山口県の定数が1減となり、それに伴う区割りの変更が予想されるので、それに備えるためにも今回の公認争いは益々厳しいものとなる。

拡大衆議院山口3区内にある宇部市の市長選投開票日に、当選した候補者の陣営に駆けつけ拍手する林芳正参院議員(左)と河村建夫衆院議員(右)=2020年11月22日、山口県宇部市相生町
 これ以外にも、自民党内の公認争いは、群馬1区、静岡5区、新潟2区などを中心に激しさを増しており、小選挙区制導入によって緩和されたはずの派閥の抗争が、公認争いを通じて選挙戦に大きく影響していることを窺わせる。

 有権者の選択がこの派閥抗争によってねじ曲げられることを防ぐために有効な一つの方法が、党員による予備選挙の導入である。次々回の衆院選では、10の県において定数が一つ減少するので、公認争いは益々激化することが予想される。ついては、是非それまでには、主要政党の公認希望者が競合するすべて選挙区において予備選挙を実現するよう、関係者の努力を要請したい。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

登 誠一郎

登 誠一郎(のぼる・せいいちろう) 元内閣外政審議室長

兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、外務省入省(1965)、駐米公使(1990)、ロサンジェルス総領事(1994)、外務省中近東アフリカ局長(1996)、内閣外政審議室長(1998)、ジュネーブ軍縮大使(2000)、OECD大使(2002)を歴任後、2005年に退官。以後、インバウンド分野にて活動。日本政府観光局理事を経て、現在、日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長、安保政策研究会理事。外交問題および観光分野に関して、朝日新聞「私の視点」、毎日新聞「発言」その他複数のメディアに掲載された論評多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

登 誠一郎の記事

もっと見る