自民伸びず。野党共闘に成果。劣勢をはねのけた都民ファースト。薄氷の勝利の公明党。
2021年07月05日
衆院選の前哨戦とも言われ、関心を集めていた東京都議会議員選挙。自民党は33議席を獲得してかろうじて都議会第一党を確保、都議会第二党は僅差で都民ファーストの会(31議席)が死守、公明党は苦戦が伝えられるなか、なんとか全議席を死守し(23議席)、共産(19議席)や立憲民主(15議席)は議席をやや増やすという結果で終わりました。
この結果をどう見るべきか。秋にはある衆議院の解散・総選挙にどんな影響を与えるのか。選挙コンサルタントとして論じたいと思います。
都議選の結果、都議会第一党を確保したのは自民党でした。ただし、大方の予想よりも伸び悩み、この結果を「自民党の勝利」と受け取る人は少ないでしょう。事実、自民党は60人もの候補者を擁立しましたが、当選は33人と勝率は半分程度です。
自民党は、前回の都議選で落選した元職を中心に候補者を擁立したほか、定数7や8の選挙区では候補者を3人擁立するなど、かなり積極的に候補者を立てました。都議選告示前の調査では、自民党候補者が50議席台を確保するのではとの楽観論もありましたが、蓋を開けてみれば、こういった選挙区では概ね厳しい結果(大田区では3人中2人落選、練馬区では3人中1人落選)が出ました。いずれも候補者を調整していれば、このような結果にはなっていなかったことでしょう。
中野区や豊島区といった激戦区では、結果的に議席を取れませんでした。当初は公明党も超重点区としていた選挙区ではありましたが、立憲民主党が一定の力を発揮した形です。野党共闘が成立した選挙区などで、自民党が後塵を拝することになったのは、やはり都民ファーストの会の躍進によるものでしょう。
自民党がここまでの積極的な候補者擁立をせず、もう少し合理的に候補者を擁立できていれば、小池都知事の入退院などの一連の出来事があっても、さらに3議席(目黒、大田、品川)では確実に上乗せできたでしょう。
たった3議席と思うかも知れませんが、今回の結果で自民党と都民ファーストの会との差は2議席。無所属で当選した候補者が2人、都民ファーストの会に入れば、都議会第一党はまだ分からない情勢です。合理的な候補者擁立をできなかったことは、大きなミスといえるでしょう。
一方、都民ファーストの会は、苦戦を伝える事前の予想と裏腹によく踏ん張りました。実際、筆者も含め様々な議席予測が出ていましたが、告示直前直後までの都民ファーストの会の議席予測は概ね10台。苦境をはね返した要因の一つが、都民ファーストの会の特別顧問である小池百合子都知事の動きにあったのは間違いありません。
選挙前の過労による入院、選挙終盤での退院と記者会見、そして各陣営への応援という流れが、テレビやインターネットで大々的に放映されることで、潮目は確実に変わったと思います。
まず、小池都知事への同情票は一定程度あったでしょう。一般に、選挙では(社会的コミュニティの関与度合などから)男性は序盤で投票先を決定し、終盤に女性が決定すると言われています。また、選挙戦後半にかけて、「政策」や「実績」などよりも、「人物・人柄」や「性格」、「ストーリー」といった要素によって投票先を決定する層が動くと言われます。そんななか、小池都知事の動きが耳目を集めたことが、最終盤の票の動きに繋がったとみるべきでしょう。
都民ファーストの会の劣勢が伝えられたことが、“アンダードッグ効果”(日本語でいうと判官贔屓でしょうか)をもたらしたことも否めません。
前回2017年東京都議会議員選挙では、都民ファーストの会が圧勝しました。圧勝という結果は、言い換えれば、多くの都民が都民ファーストの会の名前を4年前に書いているという事実の証左でもあります。結果的に、この事実が選挙戦中盤以降、勝ちそうな候補者(報道では自民優位といわれていた)ではなく、勝利まであと一歩の候補者(都民ファーストの会の苦戦が伝えられていた)へと票が動くことにつながったと言えます。
くわえて、女性候補の強さです。最終日に小池都知事が応援に入った都民ファーストの会の候補者は全員当選とはなりませんでしたが、多くが当選しました。当落線上の候補者を中心に回ったのは確かですが、都民ファーストの会が複数候補者を擁立し、かつ「男性」「女性」と2人出たケースでは、女性候補者に票が偏る現象(足立、世田谷、杉並など)がみられました。選挙の最終版で「無党派層」や「なんとなく自民支持層」を中心に女性が小池都知事に対して共感を持ち、前回選挙で投票をした経緯などから、都民ファーストの会の女性候補に投票したのではないかと思われます。
今回の都議選では、自民と都民ファーストの会の議席争いが注目される一方、衆院選直前ということで、野党共闘のあり方も焦点でした。結果的に、共産党は議席を19議席(+1)に増やし、立憲民主党は15議席(+7)と大幅に議席を増やすことができました。野党共闘は一定の成果を出したと言えます。
半面、様々な事情から野党共闘が成立しなかった選挙区(港、西東京、南多摩など)は課題を残す結果となりました。
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