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世界に広がる「デジタル政党」のいま

技術の進歩に見合ったデジタル民主主義の実践を進めよ

塩原俊彦 高知大学准教授

 日本ではいま、衆議院選挙が迫っている。しかし残念ながら、デジタル化に決定的に遅れている日本は、政治の世界でも進んだテクノロジーを取り入れることに後塵を拝している。

 もちろん、政治にデジタル技術を積極的に導入した国がすべて順調であるわけではない。ここでは、「デジタル政党」と呼ばれる、政党の意志決定に党員によるデジタル技術を介した直接民主主義を取り入れた政党の現状を紹介し、日本の「遠い」(?)将来を展望するのに役立てたい。

古めかしい議会

拡大Shutterstock.com

 近代議会制民主主義を誕生させたと言われる英国の慈善団体、Nestaが2017年2月に刊行した「デジタル・デモクラシー:政治的関与を変えるツール」を読むと、あの英国でさえ、議会が時代の変化に決定的に遅れていると慨嘆されていることがわかる。「両院の習慣や伝統を守ろうとするあまり、その作業方法やプロセスが事実上、骨抜きにされてしまっている」と指摘されている。さらに、「1844年に出版されたアースキン・メイの『議会の法律・特権・議事・使用法に関する論文』にはじめて記載された古めかしい議会手続きの多くは今日でも有効である」とのべられている。

 英国がこんな状況だとすれば、遅れて議会制民主主義を取り入れた日本の現状も同じように困った状況にあるとみて間違いない。

 気になるのは、「Economist Intelligence Unitが発表した「民主主義指数」の分析によると、参加率が低いだけでなく、「完全な民主主義国家」に分類される20カ国のうち16カ国で、参加意欲の低下がもっとも顕著にみられた」と報告書に指摘されている点だ。この部分は、「民主主義指数2015」をもとに書かれたもので、そこには以下のように書かれている。

 「2014年と2015年の報告書で得られた最も憂慮すべき結果の一つは、民主主義への参加に対する民衆の不満と棄権が、最も先進的な民主主義国である米国と西ヨーロッパで最も顕著であることであり、そうした国々を合わせると、民主主義指数で『完全な民主主義国』と分類されている20カ国のうち16カ国を占めている。」

 つまり、旧態依然とした選挙で選ばれる政治家の不誠実のために、政治不信が広がり、民主主義の根幹が揺さぶられていることになる。

 なお、この「民主主義指数2015」では、日本は「完全な民主主義国家」に分類されていない。167の調査対象国のうち、「欠陥のある民主主義国家」59カ国の一つと評価されていた(最新の「民主主義指数2020」では、日本は「完全な民主主義国家」に分類されているが、ランキングは21位にすぎない)。ほかに、「ハイブリッド(民主主義と権威主義の混合)体制」が37カ国、権威主義体制が51カ国あった。おそらく“Dishonest Abe”として知られている安倍晋三前首相の長い支配のもとで、日本の民主主義は決定的に脆弱化してしまったと思われる(“Dishonest Abe”については拙稿「菅首相とバイデン大統領の差はここだ」を参照)。

デジタル民主主義の類型

 報告書では、デジタル民主主義の類型として、以下の項目をあげている。詳細すぎるかもしれないが、デジタル技術を使えば、幅広い分野について民主主義のあり方を改善できることがわかるだろう。

市民への情報提供、今後行われる討論・投票・協議について市民に通知したり、アクセスを増やしたりすること(例:ライブストリーミング/放送、ウェブサイトやアプリ、議事録や投票記録)、
問題考案、市民が特定の問題に対する認識を高め、公共の議論の議題を設定できるようにすること(例: 請願サイト)、
市民からの情報提供、特定の問題に関する情報を共有したり、個々のニーズや大きなパターンや傾向を理解したりするための機会を提供(例:市民が作成したデータ)、
市民によるアイデアの提供(例:アイデアバンクやコンペ)、
技術的な専門知識を提供する市民、人々の分散した専門知識を活用するためのプラットフォームやツール(例:エビデンスや専門知識を求める対象者の募集)、
審議、市民が熟議を行うためのプラットフォームやツール(例:オンラインフォーラムやディベートプラットフォーム)、
市民による提案作成、市民が個人的に、集団的に、あるいは共同で、あるいは国家公務員とともに、具体的な提案を生み出し、開発し、修正することを可能にする(例:コラボレーション・ドキュメント)、
市民による提案吟味、市民が特定の選択肢を吟味できるようにする(例:オープンミーティング、リアルタイム・コメント)、
市民の意思決定、住民投票、特定の提案に対する投票、参加型予算編成などを通じて、市民が意思決定できるようにすること(例:拘束力のある国民投票、参加型予算編成)、
市民が公共の行動やサービスを監視・評価すること、市民による監視や評価を可能にするために、政策や法律の実施、意思決定プロセス、政策の結果、選出された職員の記録などに関する情報を提供する(例:オープンデータ、オープンバジェット、透明性データ)

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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