現在の政治の沈滞した流れをかき回して新しい流れをつくる人材は小池氏?
2021年07月08日
東京都議選が終わった。都議選といえば、1993年のそれを今なお鮮やかに思い出す。あの年もやはり、今年の同じように衆議院の解散・総選挙を目前に控えるなかでの選挙であった。
93年6月18日、宮沢喜一内閣に対する不信任案が可決され、衆議院は解散された。この日、自民党衆院議員だった私は、武村正義氏ら同志と10人で自民党を離党。21日に新党さきがけを旗揚げした。
われわれの大半は野党が提出した不信任案には同調せず、不信任案に反対票を投じたうえで離党に踏み切った。これが想定外の事態を招くことになった。野党に同調して不信任案に賛成した小沢一郎氏のグループ(44人)が自民党に残る選択肢がなくなり、3日後に新生党を結成するに至ったのである。
自民党分裂という、政界を揺るがす流れが渦巻くなか、6月27日、都議選は投開票日を迎えた。
細川護熙氏が前年の92年に立ち上げた日本新党は、立ち上げ直後の参院選で4人の当選者を出し、「新党ブーム」に火を付けていた。この4人の中には小池百合子・現都知事もいた。
われわれの動きも加わると新党ブームはさらに高まり、日本新党は初めて臨んだ都議選で20人の当選者を出した。余勢を駆って7月18日の衆院選では35議席を獲得。この衆院選では、さきがけが13議席、新生党が55議席といずれも躍進し、昭和30年以来の自社体制(55年体制)を突き崩して、自民党を下野に追い込んだのだ。〈拙著『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)参照〉
以来、都議選には、新しい政治勢力が生まれることへの期待や、政権交代を促すことへの期待が込められるケースが目につく。たとえば2009年は民主党が第一党となり、直後の政権交代に向けたムードをつくった。また、2017年は都民ファーストが躍進、直後の衆院選での新党・希望の党の結成の下地をつくった。
今回はどうだったか。昨年来のコロナ禍とそれによる社会・経済の停滞。加えて世論の反対もあった五輪の開催。こうした歴史の未曽有の不連続な事態に臨んで、政治が丸ごと一新されても当然と思った人は多いだろう。
だが、実際には、今のところ都議選を契機に新しい政治の流れが生じることはなく、従って結果も低投票率で勝者不明の勢いのないものになってしまった。
かろうじて小さな“事件”と言えば、袋小路に入っていた小池都知事が“生き返った”ことだろうか。
都議選が大詰めを迎えた頃、選挙結果について論評する幾つかのメールが、私の元に届いた。そのひとつ、長年の知人からのメールを紹介したい。
「自民党は国政の影響を受けて、一般有権者からは時代錯誤で柔軟性もなく、取り柄のはずの危機管理も評価できないと、将来への期待はゼロと見なされていると思います。都民ファーストはいまいちですが、今の状況では、よりましな選択として選ばれるのでしょう。
小池さんのことは、あまり好きではありませんが、女性政治家を見渡す限りは、他の女性政治家とはレベルが違います。男性政治家やマスコミにこれほどまでに敵対されるのは立派なことと思います。今回の体調不良は、素直にしんどいだろうと思いますし、にも関わらず最終盤に都民ファースト候補の応援に入ったことも理解できます。
また、色々と言われることは織り込み済みだと思いますが、一層の孤独感を覚えているだろうと思います。」
本当に凄い人だと思います。
他のメールもほぼ内容は同様で、総じて小池都知事に好意的。そして、政治がかつてない貧困状態にあるのに、それを打開する力が生まれないことへのいら立ちを募らせている様子が感じられた。
今回の都議選で再選された都民ファーストの女性議員が、選挙期間中に無免許運転(免許停止中)をして人身事故を起こした。
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