森友・加計学園、「桜を見る会」、総務省接待、河井夫妻の公選法違反……
2021年07月10日
新型コロナウイルス、ワクチン、東京五輪に揺れる日本は、この秋までに重大な選択を求められる。衆院議員の任期(4年)が10月21日には満了、解散・総選挙がおこなわれるからだ。我々はこの総選挙で何を選択するのか。政治制度や外交、経済政策を含めてシリーズ「2021政治決戦 何が問われるのか」で考察する。第4回は安倍晋三・菅義偉政権で相次いだ数々の不祥事についてあらためて考える。
政治改革がめざした二大政党は幻想で終わるのか~2021政治決戦 何が問われるのか①
安倍・菅政権の政治手法は政官関係をどう変えたか~2021政治決戦 何が問われるのか②
安倍・菅政権の外交・安保政策の実態と課題~2021政治決戦 何が問われるのか③
2012年から続いた安倍晋三・菅義偉政権では多くの不祥事が発覚した。森友・加計学園や「桜を見る会」の問題をはじめ、これほどの不祥事が続くのは極めて異例だ。その背景は何かを探るとともに、次の総選挙に向けて、政治が不祥事の再発防止に向けて何をなすべきなのか、考えてみたい。
大阪府豊中市の国有地が大幅に値引きされ、学校法人森友学園に払い下げられた。学園が開設を予定していた小学校の名誉校長には安倍首相の夫人・昭恵氏が就くことになっていた。昭恵氏はたびたび、学園を訪問して籠池泰典理事長らと懇談。籠池氏は安倍夫妻との親密な関係を誇示していた。
この問題が国会で追及された2017年2月、安倍首相は「私や妻が関係していたら、総理大臣も国会議員も辞める」と断言。森友問題はこの国会答弁から急展開する。
財務省の佐川宣寿理財局長は、国会で森友学園側との交渉記録は残っていないと繰り返していた。だが実際には、昭恵夫人が森友学園側を支援する内容が記載された交渉記録が残っていた。それは安倍首相の答弁に反する内容だった。
そのため、佐川氏らの判断で昭恵夫人に関する記述などが削除され、前代未聞の公文書改ざんが進められた。さらに、財務省から改ざんを求められた近畿財務局職員の赤木俊夫氏が自殺に追い込まれることになった。
桜を見る会は毎年4月、首相が主催して新宿御苑で開催されてきた。2012年末に発足した第2次安倍政権では13年4月以来、安倍首相が毎年、出席した。参加者は年々増え、13年は1万4000人ほどだったのが、19年には1万8000人を超えている。
なかでも、山口県下関市を中心とする安倍首相の後援会員の出席者が急増。19年には約800人に上り、新宿御苑での会に出席し、酒食を楽しんでいた。税金で運営される桜を見る会には「功労・功績のあった人」が招待されることになっているが、安倍氏の後援会員が大勢、招かれていた。
さらに、桜を見る会の前日には、安倍氏の後援会主催でニューオータニなどの高級ホテルで前夜祭が開かれ、後援会員は一人あたり5000円という格安で参加していたことも明らかになった。
国会で追及されると、安倍首相は①800人に上る後援会員の参加者の中にはPTA活動などで功労・功績があった人もいる②前夜祭では、会合の参加者一人一人がホテルと契約しており、安倍事務所からの経費補填はない――などと苦しい答弁を繰り返した。後援会員の参加について、「募ったが、募集していない」といった「珍答弁」もあった。桜を見る会の事務局である内閣府は、参加者の名簿などは会が終了した段階で廃棄しており、残っていないと答弁した。このため、真相は解明されていない。
森友問題と桜を見る会の問題の経緯を検証すると、共通点が見えてくる。具体的には、以下の通りだ。
安倍首相が自民党内で優位を保ち、野党も弱体という安倍「一強」とも言える政治状況の下、安倍氏周辺に公私混同の振る舞いが出てくる(昭恵夫人が安倍シンパの籠池氏が運営する小学校の名誉校長に就こうとしたり、大勢の後援会員を首相主催の会合に招いたりした)。
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それでも、菅官房長官や今井尚哉首相秘書官ら側近が首相をいさめて、公私混同を止めることはなかった。
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安倍首相は国会で追及されても、強弁する(「関係していたら総理も国会議員も辞める」「後援会員にも功労・功績があった」など)。
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官僚たちは、人事権を持つ首相官邸に忖度(そんたく)し、答弁に沿うように疑惑をもみつぶす(森友文書の改ざんや桜を見る会の名簿廃棄など)。
とはいえ、不祥事は隠しおおせない。森友文書の改ざんは、朝日新聞がスクープし、財務省は事実関係の調査と佐川氏ら関係者の処分に追い込まれた。
桜を見る会の前夜祭については、告発を受けて捜査した東京地検がホテルから明細書などを入手、安倍事務所が補填していたことが判明した。安倍氏の秘書が政治資金規正法違反(収支報告書への不記載)で略式起訴され、罰金刑が確定した。安倍氏は不起訴となったが、検察審査会で審議が続いている。安倍氏が国会で「前夜祭への補填はしていない」などと、事実に反する答弁を計118回続けていたことも、国会事務局によって確認されている。
一連の経緯の中で、次のような疑問が浮かぶ。
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