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帝王・キャラウェイ高等弁務官と闘った魚屋の「ウシ」

映画「サンマデモクラシー」が問う”沖縄の自治”

阿部 藹 琉球大学客員研究員

沖縄に関心ない人に「圧倒的に面白い」ものを

 うちな〜噺家・志ぃさーさんによる落語にドキュメンタリー、再現ドラマに歴史映像、さらには活弁まで。あらゆる映像の演出手法をこれでもかと詰め込んで爆発しそうな物語を川平慈英さんのナレーションがぐいぐいと引っ張っていく。観客はアメリカ統治下でデモクラシーと自治を求める沖縄の闘いの真っ只中に放り込まれ、一緒に駆け抜ける。本土出身の筆者にとっては、故郷から遠く離れた沖縄という土地で自分が生まれる前に繰り広げられた人びとの運動だが、玉城ウシの、ウシの弁護士である下里恵良の、そして瀬長亀次郎の闘いの行方を夢中で追いかけた。

 それこそが「サンマデモクラシー」の目指したものだと山里監督は語る。

「サンマデモクラシー」の山里孫存監督拡大「サンマデモクラシー」の山里孫存監督

 山里孫存監督 沖縄について知っている人、理解のある人にだけ届く作品を作っていてはダメだと思っています。これまであの手この手を尽くして沖縄に関する色々な番組を制作したけれど、まだ届かないという気持ちがある。2006年に沖縄の伝説の芸人・小那覇舞天の番組を作ったんですが(「戦争を笑え 命ぬ御祝事さびら!沖縄・伝説の芸人ブーテン」)、かなり工夫してエンターテイメント要素を入れて制作しました。ですが、本土の評論家の方から「本土の視聴者は沖縄戦の話になるとチャンネルを変えてしまう。この作品も面白かったけど途中でやっぱり沖縄戦の話になった。そこでチャンネルを変えられてしまう」と言われました。だから今回は“圧倒的に面白いもの”を作ろうと思いました。

 確かに圧倒的に面白い。映画の冒頭、カメラはウシを知っている人を探して(現在は建て直しのために取り壊された)那覇市牧志の公設市場に向かう。あの人も、この人もウシを知らず、「市場の生き字引き」と名指しされた人も首を傾げる。カメラと市場を彷徨い、ウシの親戚にたどり着くまでのワクワク感によって私は一気に映画の世界に没入した。どうやらこれも山里監督の狙い通りらしい。

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筆者

阿部 藹

阿部 藹(あべ あい) 琉球大学客員研究員

1978年生まれ。京都大学法学部卒業。2002年NHK入局。ディレクターとして大分放送局や国際放送局で番組制作を行う。夫の転勤を機に2013年にNHKを退局し、沖縄に転居。島ぐるみ会議国連部会のメンバーとして、2015年の翁長前知事の国連人権理事会での口頭声明の実現に尽力する。その後仲間と共に沖縄国際人権法研究会を立ち上げ、沖縄の諸問題を国際人権法の観点から分析し情報発信を行っている。2017年渡英。エセックス大学大学院にて国際人権法学修士課程を修了。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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