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強硬演説の習近平主席と中国共産党の行方~完成された統治システムに綻びも

真意が読み解き難い習主席演説。米国の対中圧力が強まる中で日本は……

武田淳 伊藤忠総研チーフエコノミスト

完成度の高い中国の統治システム

 この間に築かれた中国の統治システムは、共産党一党独裁体制でありながら、特に経済成長という面において、以下の三点によって共産主義を目指す独裁政権が持ち得る欠点を補い、自由主義・民主主義体制と比べても完成度の高いモデルだったように思う。

 一点目は、現在、チャイナ・セブンと称される中央政治局常務委員会による集団指導体制である。合議制によりチェック機能が働くことで政策の偏りを防ぎ、必要に応じて機動修正も可能となる。

 その結果、国家資本主義の下で集められた莫大な資本を効果的に再分配し、輸出と投資の好循環を柱とする極めて高い経済成長を実現した。高成長は国民へ分配する潤沢な富をもたらし、所得格差拡大に対する不満はある程度抑えられた。

 二点目は、新しいビジネスに対する規制の緩さである。中国では先に市場が育ち、後から政府の規制が入ることは珍しくない。

 最近では、5年ほど前にサービスが始まったシェア自転車が、大手IT企業の参入も相次ぎ瞬く間に中国各都市で普及した。その後、設置場所や保証金管理など規制が導入・強化されるにつれて勢いは失ったが、現在でも市民の足として一定の役割を果たしている。そのほか、遠隔医療や自動運転などの分野で規制のハードルの低さにより5G技術を活用した実証実験が進むなど、特に日本など変革のスピードが遅い国にとっては脅威となった。

 三点目として、ネットによる民意の汲み取りを指摘したい。

 中国では政策運営に対して選挙など民主主義の手続きによって民意を反映することができないが、中国政府がネット上に飛び交う市民の声を、かなりの人手をかけてチェックしている。主な目的は市民の監視であろうが、民意が汲み取られ政策に反映されることもあり、中国の政治システムの問題点である民意反映の欠如を補う面もある。

西側の価値観と決別、共産主義社会に向けアクセルか

拡大中国の習近平(シー・チン・ピン)国家主席=2021年4月22日、米国務省ウェブサイトの中継動画から

 習近平主席が共産党総書記に選出された2012年11月当時は、党内民主化が進むのではないかと期待する声も聞かれた。太子党と呼ばれる共産党幹部子弟との関係だけでなく、多方面に配慮できる人物と評され、また、前主席の胡錦涛とともに政治局委員を選ぶ選挙の実施に前向きだと報じられたこともあった。

 しかしながら、実際には反腐敗という名目の下、政敵を次々と葬り去り、

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筆者

武田淳

武田淳(たけだ・あつし) 伊藤忠総研チーフエコノミスト

1966年生まれ。大阪大学工学部応用物理学科卒業。第一勧業銀行に入行。第一勧銀総合研究所、日本経済研究センター、みずほ総合研究所の研究員、みずほ銀行総合コンサルティング部参事役などを歴任。2009年に伊藤忠商事に移り、伊藤忠経済研究所、伊藤忠総研でチーフエコノミストをつとめる。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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