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緊急事態宣言下で開かれる東京五輪・パラリンピックを巡る政治的構造と本質

外交・政治の一手段であり、いいビジネスであるスポーツの祭典の周りで起きていること

三浦瑠麗 国際政治学者・山猫総合研究所代表

オリンピックをめぐる二層構造の政治

 さて、人々の暮らしや命がかかっている緊急事態宣言が、こうも軽々しく出されるようになった背景には、やはりオリンピックがある。政治サイドからすれば、オリンピックが期日のある予定として控えていたがために、かえって「正常化」を言い出しにくくなったという構図である。

 オリンピックをめぐる政治は今、二層構造になっている。上の層は、IOCや諸外国、ワクチンメーカーなど海外のアクターと日本のアクターとの間で展開される政治。下の層は、政府と分科会や東京都、野党の間で展開される国内政治であり、それぞれにメディアが介在する。

 こうした二層の政治は、どちらかといえば普通の国際政治であり、国内政治だ。オリンピックがナショナリズムの発露や国威発揚の機会としてしばしば利用され、多額の利得やステークホルダーが絡む大規模なイベントであるがゆえに、政治化されるということだ。

 国民は政治の主人公とされながら、この二層の政治のどちらにも本格的には参加しておらず、世論調査や街頭インタビューなどで垣間見られる「気分」を、メディアが代弁しているに過ぎない。そのかわり、政治の外側に広大なネット言論空間が広がっており、二層の政治に対して、各自が様々なやり方で意見を述べ、少数のアクティビストが境界をまたいでリアルに行動している。重要なのは、国民の大半はあくまで受け身だということだ。

拡大会見に臨むIOCのトーマス・バッハ会長=2021年7月17日、東京都江東区

アクティビストが主張する「腐敗」言説

 アクティビストの主張で、もっともシンプルに説得力を持つのが、いわゆる「腐敗」言説である。IOCから日本政府まですべてが腐敗しており、権力者や資本の都合の良いように都市が開発されてしまうのだという、いかにも分かりやすい言説だ。彼らは国境を越えてオリンピックを阻止するために連帯して行動しているため、それぞれの分野でそれぞれのアジェンダを持ってはいるが、「No Olympics!」においては連帯が可能である。

 安倍晋三前首相がいみじくも「反日的な人」と名指したのは、こうした運動を実際にはもっと大きな広がりを持つものとして拡大解釈しているせいではないかと思う。彼らの反権力的志向は確かだから、日本的に言えば「左翼」という単純な塊として、安倍さんなどには理解されるのだろう。

 けれども、オリンピック廃止論は、

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筆者

三浦瑠麗

三浦瑠麗(みうら・るり) 国際政治学者・山猫総合研究所代表

1980年神奈川県茅ケ崎市生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。専門は国際政治、比較政治。東京大学政策ビジョン研究センター講師などを経て現職。著書に『シビリアンの戦争―デモクラシーが攻撃的になるとき』(岩波書店)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)、『あなたに伝えたい政治の話』(文春新書)、『21世紀の戦争と平和 徴兵制はなぜ再び必要とされているのか』(新潮社)など。政治外交評論のブログ「山猫日記」を主宰。公式メールマガジン、三浦瑠麗の「自分で考えるための政治の話」をプレジデント社から発行中。共同通信「報道と読者」委員会第8期、9期委員、読売新聞読書委員。近著に『日本の分断―私たちの民主主義の未来について』(文春新書)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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