間違い続きの「現実的」選択、それでも「負けるが勝ち」の強弁
2021年07月23日
第2次大戦で日本が降伏した翌日、生徒を集めてこう言い放った教師がいたそうだ。
北杜夫の「どくとるマンボウ青春記」に出てくる。
終戦前から戦後の旧制松本高校などが舞台。激変する時代の若者や教師の日々を生き生きと描いた名作である。
この話を思い出したのは、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長の言葉が重なったからだ。緊急事態宣言下での五輪開催について会見でその意味を語っている。
菅義偉首相は「人類がウイルスに打ち勝った証し」としての東京五輪と言い続けた。どうしても勝ったことにしないといけないという苦し紛れが橋本会長の言葉ににじむ。
緊急事態宣言下、無観客で五輪開催という無残な事態が「レガシー」になる!
敗戦翌日の教師の論法にそっくりだ。
言った本人も切なかろう。
与党・公明党の山口那津男代表は6月17日、党の会合で東京五輪の開催について「中止を叫んでいた政党もあるが、極めて非現実的な主張であり、国民の不安をあおりかねない主張だ」と批判した。
中止が「非現実的」で、開催が「現実的」というわけだ。
しかし、無観客の五輪のどこが「現実的」なのだろうか。平時なら小学校の運動会でも観客なしはありえない。この五輪がさらしているのは、むしろ「超現実的」あるいは「非現実的」としかいいようがない奇妙な姿である。
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