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世襲政治の3つの弊害~立憲は内規を整備し、自民との差別化を図れ

山内康一 前衆議院議員

 自民党のベテラン議員が衆院選不出馬を表明し、その後継候補に世襲の新人が内定する例が相次いでいます。世襲議員のなかにも優秀な政治家はいますが、それでも世襲政治には次の3つの弊害があると思います。

1) 親の地盤を引き継ぎ、苦労することなく連続当選できるため、特権意識を持ち「上から目線」になってしまう傾向がある。庶民感覚や弱い立場の人たちへの想像力に欠ける国会議員が増える。

2) 有為な人材が国政に参入する障壁が高くなる。機会の平等の観点から問題。また能力本位の人材登用を阻害するため、人材の質が低下する。

3) 有権者は「世襲するほど国会議員には“うま味”があるんだろう」という目で見るので、政治不信を招く。公職の私物化と受け取られ、民主的正統性の点で疑問。

多様性や不条理を肌で感じず、おとなになって

 経済学者の橘木俊詔京都大学名誉教授と参鍋篤司流通経済大学准教授は「世襲格差社会」のなかで、世襲議員について次のように書きます。

 東京で教育を受け育ち、学校を卒業したのちも富裕な人々に囲まれ、そして地盤を引き継ぎ、優雅に暮らすことになる。そうした暮らしを続けていくうちに、世の経済格差、地方と東京の格差などについて、鈍感になっていく。

リオ五輪の閉会式のアトラクションで、人気ゲームのキャラクター「マリオ」に扮して「土管」の中から登場した安倍晋三首相(当時)=2016年8月21日、ブラジル・リオデジャネイロ拡大首相経験者には世襲議員が目立つ。写真はリオ五輪の閉会式のアトラクションで、人気ゲームのキャラクター「マリオ」に扮して「土管」の中から登場した安倍晋三首相(当時)=2016年8月21日、ブラジル・リオデジャネイロ
 世襲議員の多くは、子ども時代を東京で過ごします。安倍前総理も山口県出身といいながら、東京の成蹊小学校、成蹊中学校、成蹊高等学校、成蹊大学という、典型的な東京の「山の手のお坊ちゃん」です。山口県の強固な地盤を親から引き継ぎ、落選の恐怖を味わうこともなく、ノーリスクで悠々と当選を重ねてきました。多くの有力な世襲議員が似たようなものだと思います。

 おそらく安倍前総理の小中学校の同級生には、貧困家庭の子どもや障がいのある子ども、外国にルーツを持つ子どもはいないか少なかったことでしょう。裕福な家庭に生まれ、親の学歴も同質的な集団の中で育ち、社会の多様性や不条理を肌感覚で知ることなく成人したのだと思います。

一般の国民の参入を妨げ、人材の質の低下を招く

 さらに橘木氏と参鍋氏は次のように続けます。

 さらに世襲議員の存在は、一般の国民が議員となるのを妨げている側面もある。非世襲議員は、一度落選してしまうと、その後の生活が成り立ちにくい。日本の大企業ではとくに、まだまだ雇用の流動性は低く、選挙に出馬するのはかなり大きなリスクをともなう。(中略)「普通」の人が、国民の代表たる議員になることは、非常に困難な状況であると言ってよいだろう。世襲議員の存在感が増すことは、その結果、世襲議員自体の質が問題となるだけでなく、「非」世襲議員の質を低めてしまうことにつながり、こうした弊害の方がむしろ大きいと言わざるを得ない。


筆者

山内康一

山内康一(やまうち・こういち) 前衆議院議員

 1973年福岡県生まれ。国際基督教大学(ICU)教養学部国際関係学科卒。ロンドン大学教育研究所「教育と国際開発」修士課程修了。政策研究大学院大学「政策研究」博士課程中退。国際協力機構(JICA)、国際協力NGOに勤務し、インドネシア、アフガニスタン等で緊急人道援助、教育援助等に従事。2005年衆議院議員初当選(4期)。立憲民主党国会対策委員長代理、政調会長代理等を歴任。現在、非営利独立の政策シンクタンクの創設を準備中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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