メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

私たちはなぜ入管収容者支援とウィシュマさんの死の真相究明にとりくむのか~千種朋恵さん

ウィシュマさんと面会したSTART学生メンバーインタビュー

松下秀雄 「論座」編集長

必死に生きようとしたのに、詐病とみなされて

名古屋出入国在留管理局で収容中に亡くなったスリランカ国籍のウィシュマ・サンダマリさん(中央)と妹たち。出国の2日前に撮影したものだという=遺族提供拡大名古屋出入国在留管理局で収容中に亡くなったスリランカ国籍のウィシュマ・サンダマリさん(中央)と妹たち。出国の2日前に撮影したものだという=遺族提供
 ――ウィシュマさんの死について、法務省・出入国在留管理庁が4月に公表した「中間報告」を読んで、どう感じましたか。

 全体を通して、ウィシュマさん本人から点滴や入院の要望はなかった、外部の病院にいった時にも医師から点滴や入院の指示はなかったと主張する中間報告になっています。

 しかしその後、いろんなことが明らかになってきました。たとえば2月5日に受診した消化器内科の医師の診療記録には「(薬を)内服できないのであれば点滴、入院」と書かれていました。なくなる2日前の3月4日に受診した精神科の医師は、入管に仮放免を勧めていました。なぜ中間報告にそういうことを載せないのか、とても疑問に思います。

 中間報告には、ウィシュマさんは入管から出された給食はあまり食べなくても、パンを食べたり炭酸飲料を飲んだりしていたという記述が何度かあって、まるでウィシュマさんは詐病だった、病気のふりをしていたと主張しているような内容です。

 なぜ本人が炭酸飲料とかを購入して食べていたかというと、自分が食べられるものを必死に探していたんです。時には水も吐いてしまうから、砂糖を溶かして試していたようで。でも、パンや炭酸飲料も吐いてしまっていました。

 生きるために必死だったウィシュマさんを詐病扱いし、入管にとって都合の悪い事実は捻じ曲げ、隠蔽している報告書だと感じます。許せません。

入管職員の説明で医療がゆがめられた

 入管の医療にはたくさんの問題があります。外部の病院にいきたいといっても、連れていくかどうかを決めるのは入管側。私たちなら医師に直接、自分の症状や要求を伝えることができますが、被収容者の場合は、医者と患者の関係を入管が支配している状態です。

 ウィシュマさんが亡くなる2日前の3月4日、ウィシュマさんを診察した精神科の医師は、入管職員から「支援者から『病気になれば仮釈放してもらえる』と言われた頃から心身の不調を生じている」という口頭の説明を受け、詐病の可能性があると考えたそうです。このような職員からの説明がなければ詐病は疑わなかったと、この医師は証言しています。医師は入管職員に仮放免を勧めましたが、明確な判断には至らずに「様子見」をした。入管の情報提供によって医師が先入観をもって診察し、結果明確な判断ができなかったと思います。

 さらに、この医師は、診察した際のウィシュマさんの様子は「ぐったりしていた」が、入管職員から「いろいろ検査したが、内科的には問題がない」「体は大丈夫」といわれ、精神科のほうだけみておけばよいと思ったそうです。しかし、実際は、内科では胃カメラの検査しかしていませんでした。もし、このとき適切な診察が行われ、仮放免の判断が医師から出されれば、ウィシュマさんは助かっていたかもしれません。

 入管職員の説明によって医療がゆがめられ、結果、ウィシュマさんはなくなってしまいました。

 ほかの被収容者の方でも、自分がどういう状態で、なんのために薬をもらっているのかもわからずに飲み続けている人もいて、ほんとに危険な状態だと思います。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

松下秀雄

松下秀雄(まつした・ひでお) 「論座」編集長

1964年、大阪生まれ。89年、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸、与党、野党、外務省、財務省などを担当し、デスクや論説委員、編集委員を経て、2020年4月から言論サイト「論座」副編集長、10月から編集長。女性や若者、様々なマイノリティーの政治参加や、憲法、憲法改正国民投票などに関心をもち、取材・執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

松下秀雄の記事

もっと見る