花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授
在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
次の総理に求められるのは、国民との対話を絶やさない姿勢だ
今後の医療現場の逼迫は必至であり、政府はそれを踏まえ、今後は中等症などの患者は自宅療養を基本とし、入院は重症者と重症化リスクの高い患者に限る、とする新たな方針を決めた。つまり、この先、症状が余程重篤でない限り入院もできなくなる。
これだけの感染急拡大を前に、病床数が限られていることを考えれば、いずれ、入院できる者を限定するのも不可避化かとは思っていたが、この新方針を見て、正直、果たしてこれが機能するかと不安なしとしない。
というのは、この病気の怖さは、容体が短時間のうちに急変することにあり、今、症状は軽いと安心していても、それが次の時点で命にかかわるほどの危険な状態に急変することにある。そういう例はいくらでもある。そこで対応を誤れば命を落としかねないのだ。この方針で本当に大丈夫だろうか。
何より心配されるのが、緊急事態宣言の効果が薄れたことだ。これまで3回の宣言では、2週間もすれば事態は沈静化の方向に向かっていた。今回は明らかに異なり、2週間たった今、逆に感染者数が幾何級数的に増えている。
つまり、デルタ株の前に、これまでの対策が無力化したかのようだ。緊急事態宣言が効かなくなったとすれば、最早手の打ちようがない。全国知事会はロックダウンのような手法の在り方も検討すべしという。
政府には手詰まり感が広がり、頼みの綱はワクチンと、何かと言えばそればかり強調するが、今、我々が戦っているのは今日、明日の敵だ。何か月か先に接種率が目標を達成したところで何の意味もない。今の事態をコントロールできるかどうかが勝敗の分かれ目なのだ。
過去3回、それなりに顕著な人出の減少がみられたが、今回は明らかに減り方が少なく、場所によっては逆に増えているところすらある。我々の肌感覚で見ても、土日など、繁華街は黒山のような人だかりであり、三密回避、社会的距離の維持は一体どこへいったか、と思うほどだ。