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感染爆発に緊急事態宣言が効かないのはなぜか――心に響かぬ菅総理の言葉

次の総理に求められるのは、国民との対話を絶やさない姿勢だ

花田吉隆 元防衛大学校教授

政府の「入院制限」方針は大丈夫か

 今後の医療現場の逼迫は必至であり、政府はそれを踏まえ、今後は中等症などの患者は自宅療養を基本とし、入院は重症者と重症化リスクの高い患者に限る、とする新たな方針を決めた。つまり、この先、症状が余程重篤でない限り入院もできなくなる。

 これだけの感染急拡大を前に、病床数が限られていることを考えれば、いずれ、入院できる者を限定するのも不可避化かとは思っていたが、この新方針を見て、正直、果たしてこれが機能するかと不安なしとしない。

 というのは、この病気の怖さは、容体が短時間のうちに急変することにあり、今、症状は軽いと安心していても、それが次の時点で命にかかわるほどの危険な状態に急変することにある。そういう例はいくらでもある。そこで対応を誤れば命を落としかねないのだ。この方針で本当に大丈夫だろうか。

拡大新型コロナウイルスの感染者の入院を制限する方針を決めた関係閣僚会議。菅義偉首相(右)、西村康稔経済再生相、田村憲久厚生労働相らが出席した=2021年8月2日、首相官邸

緊急事態宣言を出しても感染爆発

 何より心配されるのが、緊急事態宣言の効果が薄れたことだ。これまで3回の宣言では、2週間もすれば事態は沈静化の方向に向かっていた。今回は明らかに異なり、2週間たった今、逆に感染者数が幾何級数的に増えている。

 つまり、デルタ株の前に、これまでの対策が無力化したかのようだ。緊急事態宣言が効かなくなったとすれば、最早手の打ちようがない。全国知事会はロックダウンのような手法の在り方も検討すべしという。

 政府には手詰まり感が広がり、頼みの綱はワクチンと、何かと言えばそればかり強調するが、今、我々が戦っているのは今日、明日の敵だ。何か月か先に接種率が目標を達成したところで何の意味もない。今の事態をコントロールできるかどうかが勝敗の分かれ目なのだ。

拡大全床が埋まった新型コロナ専用病棟。感染防御のための透明のパーティションの向こうで、看護師らは患者の対応を続けていた。都内の新規感染者数はこの日、3千人を超えた=2021年7月28日午後、東京都立川市の立川相互病院
 確かに政府の呼びかけに対する国民の反応は鈍い。政府は盛んに人流の減少を強調するが、緊急事態を宣言すれば人流が減るのは当然であり、問題はどれだけ減ったかだ。それが今回、思わしくない。

 過去3回、それなりに顕著な人出の減少がみられたが、今回は明らかに減り方が少なく、場所によっては逆に増えているところすらある。我々の肌感覚で見ても、土日など、繁華街は黒山のような人だかりであり、三密回避、社会的距離の維持は一体どこへいったか、と思うほどだ。

拡大緊急事態宣言中の東京・渋谷のスクランブル交差点。午後8時をすぎて広告の明かりが消えても人波が続いた=2021年7月28日

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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