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米国で強まるトヨタ自動車批判

大広告主への忖度で日本では知られていない「真実」

塩原俊彦 高知大学准教授

 トヨタ自動車と言えば、日本が誇る世界企業と言えるだろう。だからこそ、世界からトヨタがどのようにみられているかに無関心ではいられない。

 実はいま、とくに米国においてトヨタへの批判が強まっている。ところが、国内最大規模のCM提供企業であるトヨタへの批判に及び腰にならざるをえないマスメディアが国内には多い。そこで、ここではこうした遠慮や忖度なしのトヨタ批判を紹介してみたい。そうした批判に真摯に向き合ってこそ、「世界のトヨタ」と呼ばれるだけの会社となれるのではないかと思うからである。

「ニューヨーク・タイムズ」と「ワイアード」の批判記事

 2021年7月25日付のニューヨーク・タイムズ電子版は、「トヨタはクリーンカーをリードしてきた。いまでは「クリーンカーを遅らせるために働いている」と批判されている」という記事を伝えた。その副題は、「トヨタは水素エネルギーに賭けていたが、世界が電気自動車に移行するなか、時間稼ぎのためと明らかに思われる、気候変動規制への闘争を仕掛けている」となっている。

 7月28日付のワイアードでは、「トヨタは電気自動車(EV)で空振りした。いま、トヨタはEVの普及を遅らせようとしている」という記事が公開された。「ハイブリッド車や水素燃料電池への投資を守るために、トヨタは電気自動車への移行に反対するロビー活動を行っている」という見出しがトヨタ批判の内容を伝えている。

 ここでは、この二つの記事をもとに、米国で強まりつつあるトヨタ批判の現状について紹介し、日本人もまたトヨタに対して厳しい目を向ける必要性があることに気づいてもらいたい。

ハイブリッド車の成功と水素車への賭け

拡大トヨタ自動車の水素エンジン車「カローラH2コンセプト」=2021年5月22日、静岡県小山町の富士スピードウェイ

 まず、トヨタのイメージの悪化について指摘しておきたい。他社に先駆けて世界で初めて量産したハイブリッド(内燃機関と電気モーターを搭載した)車、プリウスによって、トヨタは大成功を収め、「環境にやさしいクルマづくり」の世界のリーダー格にのぼりつめた。環境に関心を寄せるレオナルド・ディカプリオが2007年2月のアカデミー賞受賞式にプリウスを自ら運転して登場したことが話題を集めたこともある。

 他方で、トヨタは長期的には水素燃料電池車が乗用車の主要な技術になると判断し、EVよりも水素自動車に「賭け」てきた。その典型が2015年に米国で発売されたMIRAIであった(詳しくは拙稿「脱炭素社会の実現のカギを握る水素:世界の覇権争奪にも影響/下」を参照)。まさに、MIRAIにトヨタの「未来」を賭けたのである。だが、水素自動車は依然としてコストが高く、乗用車用の燃料としての水素は普及していない。

 こうしたことから、トヨタとしては短期的にはハイブリッド車で温室効果ガス削減に貢献しつつ、利益確保をねらうしかない状況に追い込まれているのではないか。それが、ガソリン車廃止やEV義務化への反対運動につながっているように思われる。いま、トヨタへのイメージは悪化している。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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