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コロナ禍で正念場に立つ菅義偉首相~身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ

入院制限の新方針に世論反発。東京五輪でも反転せず、止まらない支持率の低下。

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

国民は何に怒っているのか

 高まる一方の世論の反発に直面し、政府は慌てて火消しに動いた。

 8月5日、田村憲久厚労相は国会で「中等症は原則入院、重症化リスクが低い人が在宅になる」と述べた。であれば、どうして最初からそう言わないのか。ただ、これでも「急変したらどうしたらいいのか」という不安には答えていない。

 まさにその日、東京の一日のコロナ感染者数が5千人を超えた。その後も高水準が続き、8月下旬には2万人に達するという推計もある。こうした状況であれば、医療提供体制が逼迫し、これまでの入院・宿泊・自宅療養の体制を変える必要があることは、国民も理解しているだろう。

 だが、今回の新方針を誰が、どのように決めたのか。なぜもっと早く実施しなかったのか。あるいは、いったん決めた方針をすぐに見直さなければならない粗雑さに対して、国民は怒っているのだ。

 そもそも、この問題は1年遅れとなっている。多くの人が指摘するように、昨年のうちに仮設病棟をなぜ、建設しなかったのか。この重大な失政は、コロナ感染拡大に関する政府の甘い見通しによるものだろう。

 確かに、五輪を1年延期すれば、コロナは収束して五輪も開催できるという“楽観シナリオ”に立てば、球場などを借り上げてまで仮設病棟をつくる必要はなかった。だが、現状は、仮設病棟をつくったり、五輪の選手村を活用したりしなければ、病床の不足は格段に深刻になる可能性がある。ここにこそ、この問題の深刻さがあるのではないか。

なぜ会議に専門家がいないのか

拡大新型コロナウイルス感染症の医療提供体制に関する関係閣僚会議で発言する菅義偉首相(右)=2021年8月2日午後5時41分

 現内閣の菅首相への信頼が大きく失墜しつつある理由は、今回の方針の決定、発表の過程にも鮮明に表れている。順を追ってそれを確認してみよう。

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官 福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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