松下秀雄(まつした・ひでお) 「論座」編集長
1964年、大阪生まれ。89年、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸、与党、野党、外務省、財務省などを担当し、デスクや論説委員、編集委員を経て、2020年4月から言論サイト「論座」副編集長、10月から編集長。女性や若者、様々なマイノリティーの政治参加や、憲法、憲法改正国民投票などに関心をもち、取材・執筆している。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
声を上げ、行動を起こす人が増えれば変わると信じて
――菊川さんご自身、難民や外国人労働者の問題に関心をもつようになったきっかけは?
2019年夏から、ノルウェーに留学した経験が大きかったです。そこでたまたま移民・難民を取り扱う科目に出会い、その授業がおもしろかった。ヨーロッパ諸国の先進的な移民・難民政策を知り、ノルウェーから日本の状況を調べて、技能実習の問題だとか、日本にいる外国人の生きづらさをすごく感じました。
それから、寮の仲間にシリア人の難民の方がいたんです。「フラットメイト」と呼ぶんですが、部屋が同じ階にあって、キッチンをシェアしていました。彼は大学で学びつつ、自分で生計を立てていました。
最初は難民だとは知らなかったんですけど、「こういう勉強をしている」と彼にいったら、「私はシリアから難民としてきている」と聞かされて、すごくびっくりしました。
自分の中でイメージしていた難民は、布きれ一枚というか、かわいそうな、助けなきゃいけない存在だったんです。でも、彼は身なりもしっかりしているし、話もおもしろいし、料理も得意。ご飯をつくってくれたりしていたんですが、おいしくて。語学もペルシャ語や英語、ノルウェー語に堪能です。
難民を色眼鏡でみてしまっていたんだな、自分と変わらない人間なんだなと、衝撃を受けました。
―― BONDに入ったのは?
今年の1月です。帰国後も移民・難民問題に重きを置いて勉強しているのですが、講義とかテキストからは学べないことを活動を通して学びたいという思いがあって。それが大きな理由ですね。
――BONDの活動で、とくに印象に残っていることはなんですか。
毎週の面会活動を通じて「同じ人間なんだ」と、すごく感じているところです。母国でやってこられたこと、お仕事、ご家族のこと、夢……。言葉が通じない時もあるんですけど、一所懸命「こういうことをしたい」「これが好きなんだ」と伝えてくれると伝わります。そういう話を聞くと、同じ人間だし、「外国人だから」「肌の色や言語が違うから」と差別をするのはおかしいと思う。
――中でも忘れられない方はいますか。
いつもたくさんお話しをしてくださる中東出身の方がいます。6カ国語近く話せる教養のある方で、学ぶことが多くて。この前、「いま本を書いている」とおっしゃっていました。彼のような魅力的な人が収容施設に閉じ込められているのは、すごくもったいないというか、社会に出たらできることはいっぱいあるのになと感じています。
多様な価値観をもった人が集まって、一緒に社会を築いていけたら、もっともっと魅力的な日本になるし、おもしろい発展につながるはずです。そのためにも、国は在留資格を与えるべきです。
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