日本と韓国を巡る今年の8月15日。直視すべき、考えることが多かった日
藏重優姫 韓国舞踊講師、仁荷工業専門大学語学教養学科助教授
私にとって8月は、自分の誕生月という以外に、なんかソワソワする月なのです。6日、9日は原爆が投下された日。そして8月15日は日本にとっては終戦記念日で、韓国にとっては植民地支配からの解放を喜ぶ光復節。なので、一年のこの時期だけは、過去の戦争にできるだけ思いを馳せようと努力しているのですが、皆さんはどうですか。
それにしても、今年の8月15日前後の出来事を振り返ると、色々頭をもたげる出来事が深刻化し、それぞれを真摯に「直視」することが必要です。
8月9日、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球の温暖化に対して「これは人類に対する厳戒警報だ」と公表しました。スペイン、ギリシャ、アメリカ、トルコ、世界のいたるところでの山火事。日本も豪雨による洪水、土砂災害は今年も深刻で、私の記憶する限り近年は毎年起こっています。
新型コロナウイルスに至っては、イギリスで見つかった「アルファ株」、南アフリカで見つかった「ベータ株」、ブラジルで広がっている「ガンマ株」、インドで見つかった「デルタ株」、そして、最近のニュースではペルーで見つかったという「ラムダ株」なるものが日本のオリンピック関係者から初めて確認されたとのこと。IPCCは「人間の活動」が確実に温暖化につながっていると主張していますが、このウイルスも然りです。
また日本の名古屋出入国在留管理局で、スリランカ女性のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなられたという、人権侵害(犯罪にも等しい)の深刻な実態がニュースで流れてきます。この問題は、昔の在日コリアン強制送還と大村収容所を彷彿させました。強制送還、大村収容所での日本の人権侵害を問題として直視せず、反省もせず、教育してこなかった結果、今日、ウィシュマさんが亡くなったと考えざるを得ません。

出入国在留管理庁との会合に出席したウィシュマさん(遺影)の妹のポールニマさん。姉のビデオ映像の全面開示を求めた=2021年8月13日
何人亡くなれば、入管というブラックボックスで行われている酷い人権侵害は(犯罪は)なくなるのでしょうか。法務大臣の「一人一人に向き合う意識がおろそかになっていた」との弁明は、きれいにラッピングされた言葉のようで、そんなきれいごとでは済まされません。「人を人とも思っていなかった」と言うべきだったでしょう。
11日、ソウルの旧日本大使館前では、第9回世界日本軍「慰安婦」追悼日世界連帯集会が開かれました。1991年、当時67歳の金学順さん(1997年死去)の「私が慰安婦です」という実名での初証言から30年、謝罪と賠償を求める水曜日デモは1500回を超えましたが、日本では「反日」という印象だけをざっくり植え付けるような報道しかされていないようで、とても残念に思います。