日本と韓国を巡る今年の8月15日。直視すべき、考えることが多かった日
藏重優姫 韓国舞踊講師、仁荷工業専門大学語学教養学科助教授
歴史を知らない、知らされない
ドイツのヴァイツゼッカー大統領が、戦後40周年の記念演説で「歴史に目を閉ざすものは未来にも目を閉ざす」と述べました。この時の演説が岩波ブックレットから『荒れ野の40年』と題し出版され、私がそれを読んだのが中学2年生の時……。ショックで今でも強烈に印象に残っています。ドイツと日本、二つの国の自らの残虐行為に対する戦後対応の違いに衝撃を受けたというのが、その頃の感想です。ヴァイツゼッカー大統領はドイツの犯した罪を詳細に述べ、反省します。日本はうやむやな表現で、そして時には無かったことにする。この違いは一体何なのでしょうか。

リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー元ドイツ大統領(1920─ 2015)
ドイツの敗戦後、連合国軍はドイツ人にユダヤ人虐殺の実態を知らしめ、ドイツ人の精神的再教育を試みます。残虐行為を知らなかった民間人が多かったわけですね。それでもまだ自分たちドイツ軍が犯した虐殺と蛮行を信じられないというドイツ人に対しては、まだ遺体が積み重なるアウシュビッツを見学させるなどしたそうです。ユダヤ人強制収容所の存在は知っていたものの、そこであれほどの大虐殺が行われていたとは知らされていなかったのです。
この再教育は、自信喪失、ドイツ人としてのアイデンティティ崩壊にもつながりますが、事実を直視し、そこから反省と新しい平和な未来をつくろうとする覚悟へもつながりました。なぜ、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は日本の蛮行を日本人に直視させなかったのか?という疑問が湧きます。直視させていたら、植民地、南京大虐殺、731部隊などなどのあった無かった論争は存在しなかったのではないかとも思うわけです。
日本の皇国史観、天皇制を維持させたGHQ。終戦後、日本の支配から解放された韓国でも、米軍司令部は親日派韓国人をまた公職に登用しています。その意味では、日本も韓国も「直視」には至らなかった側面がありました。

日本の植民地支配からの解放を喜ぶ朝鮮の人々=1945年、ソウル、「東亜日報」提供
さて、話は戻り、日本軍性奴隷制の被害者である金学順さんの初証言は、
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