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[2] 奪われた楽園 白人の帝国主義に踏みにじられたハワイ先住民~「アロハ・オエ」

伊藤千尋 国際ジャーナリスト

白人にだまされ、支配権を奪われた先住民

 女王の座は短命だった。即位は1891年だが、2年しかもたなかった。彼女からハワイの支配権を奪ったのが、帝国主義に乗り出したばかりの米国だ。先住民が白人にだまされ、ひさしを貸して母屋を取られる流れだった。

拡大リリウオカラニ女王=ハワイ州観光局の公式ウェブサイトから
 もともとハワイの宗教は日本と同じ自然崇拝の多神教だ。森や海、火山など「八百万の神」がいた。宗教上のタブーがたくさんあり、信仰を司る神官の権力が強かった。カメハメハ王家は王権を強化するため、近代化の名のもとにタブーを撤廃して神殿を壊した。日本で明治時代に吹き荒れた廃仏毀釈の運動のようだ。

 その過程で入り込んだのが、アメリカから来たキリスト教プロテスタントの宣教師だ。15回にわたってハワイに押し寄せ、文字のなかったハワイの言葉にアルファベットを当てはめ、さらに英語教育を普及させた。

大臣も判事も米国人 あっというまに土地略奪

 ハワイ王朝はこれを機会に欧米型の近代化を目指す。制定した憲法には王が君臨する立憲君主国だと明記した。とはいえ有能なリーダーはいない。

 近代国家の運営のためにアメリカ人を大臣に任命した。アメリカ人の宣教師が教育大臣になり、アメリカ人の弁護士が法務大臣になった。

 こうして生まれた政府はアメリカに有利な政策を実行した。アメリカ人判事が土地法を作り、外国人の土地私有が認められた。あっという間にハワイの土地の75%が外国人のものとなった。大半はアメリカ人である。もともと入会権を持っていたハワイ先住の農民は土地を失った。

宗教の仮面をかぶったビジネスマン

拡大サトウキビのプランテーション
 アメリカ人は、手に入れた土地をサトウキビやパイナップルの大農園にした。キリスト教を布教するためにやってきた宣教師の多くが大農園の経営者になった。彼らは宗教の仮面をかぶったビジネスマンだったのだ。

 アメリカはハワイに軍事視察団を派遣する。視察団が目を付けたのが真珠湾だ。アメリカ海軍は真珠湾を基地にすることにした。

拡大現代の真珠湾(shutterstock.com)
 アメリカ政府は新たに即位したカラカウア王を国賓として招き、互恵条約を締結した。ハワイ産の砂糖を関税なしにアメリカ本土に輸出できるようにしたが、同時に、ハワイの港や土地はアメリカ以外の国に渡さないという項目を盛り込んだ。

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筆者

伊藤千尋

伊藤千尋(いとう・ちひろ) 国際ジャーナリスト

1949年、山口県生まれ、東大法学部卒。学生時代にキューバでサトウキビ刈り国際ボランティア、東大「ジプシー」調査探検隊長として東欧を現地調査。74年、朝日新聞に入社し長崎支局、東京本社外報部など経てサンパウロ支局長(中南米特派員)、バルセロナ1949年、山口県生まれ、東大法学部卒。学生時代にキューバでサトウキビ刈り国際ボランティア、東大「ジプシー」調査探検隊長として東欧を現地調査。74年、朝日新聞に入社し長崎支局、東京本社外報部など経てサンパウロ支局長(中南米特派員)、バルセロナ支局長(欧州特派員)、ロサンゼルス支局長(米州特派員)を歴任、be編集部を最後に2014年9月、退職しフリー・ジャーナリストに。NGO「コスタリカ平和の会」共同代表。「九条の会」世話人。主著に『心の歌よ!』(シリーズⅠ~Ⅲ)『連帯の時代-コロナ禍と格差社会からの再生』『凛凛チャップリン』『凛とした小国』(以上、新日本出版社)、『世界を変えた勇気―自由と抵抗51の物語』(あおぞら書房)、『13歳からのジャーナリスト』(かもがわ出版)、『反米大陸』(集英社新書)、『燃える中南米』(岩波新書)など。公式HPはhttps://www.itochihiro.com/

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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