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国民が乗れる「もう一隻の船」をどう創る いま必要な政権のあり方は~保坂展人・中島岳志対談

深刻な政治全体へのネグレクト。政権運営の質の転換をするために何をするべきか

吉田貴文 論座編集部

民主党政権は「連立」への理解がなかった

吉田 行政のトップとしての首長の経験は、政権交代に生かすことができるということですね。保坂さんご自身は国会議員の経験を振り返ってみていかがですか。

保坂 09年総選挙で私は11万6723票で最多得票をしながらの落選でした。ただ、社民党が国民新党とともに民主党と連立を組んで政権に参加したので、国会の外から幾つかの仕事にかかわりました。

 実は、私が与党として国政に関与するのは二度目でした。1996年衆院選で初当選したのですが、当時、私がいた社民党は自民党、新党さきがけと連立を組んでいて、自民、さきがけの先輩議員と一緒に活動しました。民主党との連立政権では、社民党の中に「自社さ政権」の経験者がほとんどなく、執行部に連立の経験値が希薄だったのは残念でした。

 2010年夏に辺野古問題が原因で鳩山由紀夫総理が辞め、菅直人政権になった時、私は「鳩山首相が辞任したので、閣外協力でも与党の一部に残るべきだ」と主張しましたが、賛同者はいませんでした。もしあの時、連立に戻っていれば、政権内のストッパー役となり、管首相が「消費税増税」「TPPもいいじゃないか」と言い出せなかったのではないか。そうすれば、参院選で民主党が予想を覆す大敗を喫することもなかったのではないかということを、ときどき思います。

拡大中島岳志さん=2021年8月15日
中島 この点は非常に重要です。民主党政権が一番理解できていなかったのは、「連立」という問題でした。衆議院が小選挙区比例代表並立制をとっている日本は、二大政党制には絶対になりません。二つの中核政党プラス小政党が存在し、連立政権にならざるを得ません。

 連立の枠組みをどうつくり、維持するのかが、そこから導かれる戦略です。それを自民党は当初から理解していて、自公連立で公明党を飼いならしました。しかし、民主党は社民党とうまくやれず、連立から離脱させてしまった。最大の失敗です。もちろん、保坂さんが本で指摘されているように、社民党側にも問題がありましたが。両党とも連立への理解が不足していました。

保守リベラル政権として成果を残した「自社さ政権」

吉田 保坂さんが政権運営の一端を「自社さ政権」で経験したというのは興味深いです。私はかつて自社さ政権を取材しましたが、政権運営に工夫をこらしました。自民3人、社民2人、さきがけ1人に割合でチームをつくり、多数決ではなく物事を決めていくというルールは秀逸でした。最大政党の自民党がごり押ししない仕組みで、まさしく連立の知恵でした。自社さ政権はもっと評価されてもいいと思うのですが……。

拡大保坂展人さん=2021年8月15日
保坂 自社さ政権というのは、村山富市政権の時、村山首相が社会党の従来の憲法観、自衛隊の位置づけを唐突に変更したことで信用ならないという印象をもたれたこともあり、村山政権、橋本龍太郎政権(編集部注:社民党とさきがけが閣外協力を解消する2次政権の途中まで)は、何もない4年半のようにとらえられることも少なくないですが、そんなことはありません。中島さんがよく口にされるように保守リベラル政権として、成果を残したと思います。

 社民党が閣外協力した第2次橋本政権は、第1次橋本政権での仕込みが芽を出してくる時期で、情報公開法やNPO法が成立するなど、市民社会に根ざしたリベラルな制度が次々とできています。選択的夫婦別姓を推進する法制審答申もこのときに出ている。自社さのリベラル路線を不快に思い、対抗心を燃やしていたのが安倍晋三さんだったと思いますね。自社さの総否定を、ご自分の政権でなさろうとしたのではないでしょうか。

 1年半あまり、与党議員として活動しましたが、自民、社民、さきがけという異なる政党の方々と法案をつくる作業は勉強になりました。この経験は与党から野党に転じた後にいきました。具体的には、超党派で児童虐待防止法をつくるとき、自民党から共産党まで呼びかけ人を集め、国会の法制局や調査室、国会図書館の調査機能を使って法案に落とし込む。大連立的な政策別合意形成の手法です。こうした手法は世田谷区政でも生きましたね。

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筆者

吉田貴文

吉田貴文(よしだ・たかふみ) 論座編集部

1962年生まれ。86年、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸、自民党、外務省、防衛庁(現防衛省)、環境庁(現環境省)などを担当。世論調査部、オピニオン編集部などを経て、2018年から20年まで論座編集長。著書に『世論調査と政治ー数字はどこまで信用できるのか』、『平成史への証言ー政治はなぜ劣化したのか』(田中秀征・元経企庁長官インタビュー)、共著に『政治を考えたいあなたへの80問ー3000人世論調査から』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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