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イスラム教徒カメラマンが見た東京五輪 スーツケースいっぱいのハラル料理が活躍

食事、礼拝堂……多様な宗教や人種に配慮した取材環境の整備が必要な時代に

海野麻実 記者、映像ディレクター

 今回の東京五輪では競技外の”サイドストーリー”として、選手村の様子が選手本人のSNSへの投稿などから様々に伝えられ、連日話題になった。そんななか、選手たちを取材するために来日している世界各国からのプレスが集うメインプレスセンターにおいて、ちょっとした論争が巻き起こった。

 イスラム教の戒律に従った「ハラール料理」の提供についてだ。

ハラルの食事の提供はなかったプレスセンター

 7月24日、東京五輪を取材する国内外のメディア関係者らの拠点となった東京ビッグサイトのメインプレスセンターに、イスラム教の戒律に従ったハラルの食事が提供されないうえ、祈りを捧げる礼拝室もなく、不満の声が上がっていると報じられた。

拡大東京五輪・パラリンピックのメインプレスセンター。報道陣の作業スペースには、透明なついたてが設置されていた=2021年7月1日、東京都江東区

 これに対し、フェンシング男子の銀メダリスト・太田雄貴氏(35=現国際フェンシング連盟副会長)が翌25日にツイッターで、
「噂になっている Halal ハラール ですが、選手村の食堂にはあります。(メディアセンターは伺っていないので、ごめんなさい、分かりません。)食堂一つとっても、宗教や国の文化など、様々な事が学べます。また自分の無知さも」
と投稿し、選手村ではハラル対応した食事が提供されていることを伝えると、2日間で1万件以上シェアされ、4万件以上のLikeを集めた。

 関心を集めたイスラム教徒への対応だが、選手村にハラル料理コーナーが設けられ、イスラム教徒の選手が安心して食事を取れるような環境が整っていることは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会も事前に「多様性確保」の一環として掲げていた。各国からの報道陣を迎え入れるプレスセンターは実際どうだったのか。組織委員会に確認すると以下のような返答が来た。

 「ハラル食が必要な方についてはご自身で持ち込んで頂くことが可能となっております」

 組織委員会が掲げる飲食提供に係る基本戦略の中では「様々な宗教的慣習、食習慣への対応が必要」とされ、現にその宣言通り、選手村では豊富にハラール料理が提供されているわけだが、プレスセンター内では、特段ハラル料理が提供されるというわけではなかったようだ。

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筆者

海野麻実

海野麻実(うみの・まみ) 記者、映像ディレクター

東京都出身。2003年慶應義塾大学卒、国際ジャーナリズム専攻。”ニュースの国際流通の規定要因分析”等を手掛ける。卒業後、民放テレビ局入社。報道局社会部記者を経たのち、報道情報番組などでディレクターを務める。福島第一原発作業員を長期取材した、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『1F作業員~福島第一原発を追った900日』を制作。退社後は、東洋経済オンラインやForbes、共同通信47Newsなどの他、NHK Worldなど複数の媒体で、執筆、動画制作を行う。取材テーマは主に国際情勢を中心に、難民・移民政策、テロ対策、民族・宗教問題など。現在は東南アジアを拠点に海外でルポ取材を続け、撮影、編集まで手掛ける。取材や旅行で訪れた国はヨーロッパ、中東、アフリカ、南米など約40カ国。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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