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アフガン情勢は国際関係に深刻な影響をもたらすのか~世界秩序を守るための中長期的視点

タリバン動向が未知数の中、各国関係は複雑化。軍事行動の前に外交を尽くせ

田中均 (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

タリバン支配への懸念は大きい

 他方、タリバンの支配がどういう政権を生むか懸念は大きい。

 タリバン政権は圧倒的米軍の力の前に一度は駆逐された政権である。その後20年を経て、ある程度の変化の必要性は認識しているのかもしれない。イスラム原理主義に基づき民主主義的価値とは大きく離れた政権になるのだろうが、アフガンの各民族を包含するような政府が出来るのか、行政能力のある前政権の官吏を活用できるのか、国際社会と一定の関係を作ることが出来るのかなど未知数の部分が多い。

拡大カブールで8月21日、国家和解高等評議会議長を務めていたアブドラ氏(右)やカルザイ元大統領(右から2人目)が、イスラム主義勢力タリバンの幹部と会談した=2021年8月21日、アブドラ氏のツイッターから

人権問題などに危惧。早期の国家関係構築は困難か

 西側諸国との関係では、まず取り残されている外国人やアフガニスタン人が安全に国外に退去できるかどうかが最初の関門だが、人権問題とテロ支援問題如何では早期の政府承認で国家間の関係を作るのは望み薄となるのだろう。

 特に女性の差別、教育を受ける権利や働く機会のはく奪を続けるとすれば、関係構築は望めない。

 テロ組織との連携を否定するが、ISやアルカイーダなどイスラム過激派テロ組織が入り込んでくることへの危惧は大きい。

拡大タリバンに番組から降板させられたとして抗議する国営テレビ局「RTA」の女性キャスター、シャブナム・カーン・ダウランさん。出社後に入構証を見せたが、タリバンに追い返されたという=2021年8月18日、ツイッターから

テロ組織の温床への危惧。中ロ印なども警戒

 周辺諸国でもタリバンによる新政権がイスラム過激派テロ組織の温床になるのではないかとの危惧が持たれている。

 特にロシアはチェチェンなどイスラム教徒が多いコーカサス地方の自治共和国内に分離独立運動を抱えており、中国は新疆ウイグル自治区で独立運動をしている「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」へタリバンの影響力が及ぶことへの警戒心は強い。インドも、パキスタンのイスラム過激派がタリバンの支援の下でカシミール分離を目的とするテロを起こすのではないかと警戒する。

 中東域内においてはシーア派イランやイスラエルとの関係は緊張するだろうが、サウジアラビアなどの穏健アラブ諸国はイスラム過激派を水面下で支援してきた経緯もあり、複雑な構図となっていくものとみられる。

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筆者

田中均

田中均(たなか・ひとし) (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

1969年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官(96-98)、在サンフランシスコ日本国総領事(98-2000)、経済局長(00-01)、アジア大洋州局長(01-02)を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、2005年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、2010年10月に(株)日本総合研究所 国際戦略研究所理事長に就任。2006年4月より2018年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、2019年11月10日刊行)、『日本外交の挑戦』(角川新書、2015年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、2009年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、2009年)など。2021年3月よりTwitter開始、毎日リアルタイムで発信中。(@TanakaDiplomat)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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