横浜市長選挙が8月22日に投開票され、立憲民主党が推薦した山中竹春氏(元横浜市立大学医学部教授)が、菅義偉首相が強力に支援した小此木八郎氏(元国家公安委員長)、や現職の林文子氏らを大差で退けて圧勝した。

横浜市長選で当選を決め、支援者から花束を贈られる山中竹春氏(左)=2021年8月22日、横浜市中区
国民の怒りを増幅した二つの出来事
菅政権の支持率が内閣存続の“危険水位”とされる20%台に入りつつあること、自民党をまとめきれず分裂選挙にもなったことに加え、選挙直前に起きた具体的な出来事が、小此木氏落選の流れにダメを押したのは明らかだろう。
ひとつは8月17日にあった自民・公明の与党幹部5人による会食だ。さしたることではないようにも見えるが、コロナ禍で長い間我慢を強いられてきた国民の感情を逆撫でした。こうしたちょっとした怒りでも、直後の投票行動を左右するものだ。
もうひとつは。同じ日に起きた悲痛な出来事である。新型コロナに感染した妊婦が、自宅療養を余儀なくされたうえ、生まれた男児が死に至ったという痛ましい事件で、政府のコロナ対策に対してくすぶっていた国民の怒りに火を付けた。コロナ禍発生当初から、病床不足に陥る危険は指摘されていた。なぜそれに対応しなかったのかと。
この二つの出来事が報道されると、国民の怒りが増幅され、政権への不満が一気に高まったことを感じた。
本分を尽くしていない国会にも不信
相次ぐ緊急事態宣言も、既に“オオカミ少年”のようになっていないだろうか。東京都の1日当たりの感染者が5千人を越えるようになると、さすがに身が引き締まったが、昨年100人を越えた時には、もっと恐怖を感じたように思う。
緊急事態宣言の効果が薄れているので、さらに厳格な対応をするべきだという人は増えているのだが、コロナをめぐる状況や傾向を確認して対応について議論をすべきだと言っても、肝心の国会は閉じたまま。閉会中審査は「やっているふり」をするだけに終わっているのが実情だ。法改正をするべきだという声が高まっても、かたくなに国会を開こうとしない政府の姿勢に、国民は怒り心頭だ。
必要な時に開かれないような国会では、その本分を尽くせない。そして世論は、政権が政策の失態や不祥事を蒸し返されるのが嫌だから、国会を開かないのではないかと推定する。これもまた、菅政権の支持率を下げる一因になっている。