安倍政権からの「負の遺産」も加わり
今回、延長された緊急事態宣言は9月12日に解除される。中途半端に見えなくもないこの延長幅も、コロナの感染状況を考慮したというよりは、政治日程を考えてのことらしい。メディアの報道によると、9月30日に自民党総裁の任期が満了する前に、菅首相が衆議院を解散し総選挙を実施する可能性を残すためだと言う。
コロナという人の命にかかわる問題をめぐっても、そうした政治的な計算が背後に働いていたということを知れば、世論がさらに硬化して、菅政権への不支持を強めるのは、自然の流れと言っていい。
このように、菅政権の現在の支持率の低下、不支持率の上昇は、自ら招いた感が強いが、ここで忘れてはいけないのは、安倍晋三・前政権のことである。実は、菅政権が前政権から引き継いだ「負の遺産」も、かつてないほど大きいのではないか。現政権が逆境に立つようになると、前政権のマイナス面がそこに加算されて不支持率を高めてしまう。
“大政局”がはじまる号砲となった市長選
菅政権はこの春、国政の補欠選挙で敗北を重ねた。7月の東京都議選でも予想外の負けを喫した。しかし、今回の横浜市長選での敗北は、首相にとって、個人的に深く関与したがゆえに、これまでになく致命的だろう。さすがに街頭で演説はしなかったものの、自分の名前で文書を送ったり、支援を訴える電話をかけたり、全面的に支援したという。にもかかわらず、大差で敗れた結果が与える打撃は大きい。
菅首相にすれば、リスクをとって臨んだこの選挙で勝利を収めることにより、自民党内での求心力を取り戻し、来月に予定される自民党総裁選、さらに衆院選を有利に進めるもくろみだったであろう。だが、想定を超えた敗北は、求心力を取り戻すどころか、政権や与党の見通しを大きく狂わせるものになったようである。
横浜市長選での敗北は、文字どおり“大政局”がはじまる号砲になったといえる。

自民党の役員会に臨む菅義偉首相(中央)。左は二階俊博幹事長=2021年8月24日、東京・永田町の自民党本部
自民党系候補者の一本化はなぜできなかったか
それにしても、今回の選挙について、菅首相にはどんな誤算があったのだろうか。
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