「がんばれ、立憲民主党」 アンケートに示された1009人の声【下】
2021年08月31日
枝野はあの重過ぎる記憶から一生逃れることができない。
福島第一原子力発電所の事故。ひとたび暴走しかかった原発はモンスターとして暴れまわり、人の手でコントロールすることは決してできなかった。官房長官だった枝野は、1週間以上ほとんど寝ずに情報を取り込んでは発信し、福島の人たちの緊急避難や都市部の計画停電などについて、菅直人首相とともに判断し続けた。絶えず記者会見を繰り返した枝野こそ原発の怖さを心底知った一人である。その一部始終は、誰よりも強く脳裏に刻み込まれている。
2016年7月、私自身が製作した映画『太陽の蓋』を公開した。この映画は、暴れ狂うイチエフの1〜4号機、必死でそれを抑え込もうと格闘する東電の現場、避難指示のために必死で情報を得ようとする官邸、そして自己防衛に汲々とする東電本店の無責任な行動、それらをドキュメンタリーではなく劇映画に仕立てた作品だ。当時政権を担っていた菅直人、枝野幸男、福山哲郎などが実名で登場する。
この映画で俳優菅原大吉さん扮する枝野幸男は、役者が枝野か枝野が役者かわからないぐらいよく似ている。完璧に冷静で落ち着いている。そんな枝野が今後日本のエネルギーを考えた場合原発に頼ることは絶対にないと言いきれる。だからこそ、2017年に立憲民主党を立ち上げた時も党の綱領に「原発に依存しない社会を」と謳い、その姿勢の明確さが多くの人を納得させたのだ。
しかし残念なことに、その後少しずつ、当初とは違う発言が新聞紙上に掲載されるようになった。昨年9月の国民民主党との合併では、両党の基本的な原発へのスタンスが違い、特に連合への依存が強い国民民主党は原発の継続を求め、立憲民主党としても脱原発へのメッセージに変化が見られるようになったのだ。
たとえば今年2月の西日本新聞のインタビューで枝野は「原発を止めるのは簡単なことではない、使用済み核燃料の行き先を決めないことには難しい」などと答えている(「『原発をやめるのは簡単じゃない』枝野氏に聞く」)。おそらくさまざまなケースを喋った中から、このように取り上げられたのだろうが、それにしても、応援団を落胆させた。
また3月の朝日新聞では、「さいたま市内での講演で、原発ゼロ法案みたいなものは作らないと述べた」とある(「枝野氏『政権とったら原発ゼロ法案作らない』 課題強調」)。脱原発運動家やエネルギー問題に関心が深い支持者が枝野の姿勢に疑問を抱くようになったことは間違いない。
そこで「がんばれ立憲民主党の会」が行った立憲民主党の支持者に対するアンケート(回答数1,009)では「原子力発電所の再稼働を認めない、新設増設は行わない、と立場を明確にする」ことを次期総選挙の公約にするのはどうかという項目を立ててみた。
結果は「A:ぜひ必要」「B:必要」と答えた人が92%で、立憲民主党応援団のほとんどが脱原発に対しては明確にしてほしいと願っていることが明確になった。この事実を枝野につきつけるしかない。
私たちはプロの撮影隊を率いて国会の事務所に乗り込んだ。原発だけではなく、集計されたアンケート結果の主な内容をストレートに聞いてみた(インタビューは2021年8月11日、衆議院第一議員会館の枝野事務所で行った)。
「がんばれ、立憲民主党」 アンケートに示された1009人の声【上】
橘 原発についてうかがいます。アンケートでは92%の人が「再稼働を認めない、新増設を行わない立場を明確にする」よう求めていました。最近の枝野さんの原発に対する発言がどうもぶれているのではないか、本当に原発を止める気があるのか、と見えるようです。
枝野 実は私はもう「その先」を言っているつもりだったのです。つまり、「原発を新増設しない、再稼働しない」はもうあたりまえで、その上で具体的にどのようにして原発をやめていくか。それが頭の99%を占めているのですが、メディアはなかなかそこを伝えてくれない。でもこちらが大前提をちゃんと言わないといけませんね。その点は反省しています
「その先」は大変です。私がいちばん心配しているのは技術者の問題です。廃炉、脱原発の目標を持ちながら、今後30年は高水準の原子力の技術者を育てるという、ある意味で相反する課題を考えなければ、脱原発のリアリティがなくなってします。それがいま私の考えていることです。
橘 「連合の中にどうしても原発を続けたい人たちがいる。枝野さんは連合に弱い」という意見もあります。
枝野 そうですか。でも連合の幹部に
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