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「重すぎる記憶」を持った政治家・枝野幸男との対話

「がんばれ、立憲民主党」 アンケートに示された1009人の声【下】

橘 民義 映画制作プロデューサー

 枝野はあの重過ぎる記憶から一生逃れることができない。

 福島第一原子力発電所の事故。ひとたび暴走しかかった原発はモンスターとして暴れまわり、人の手でコントロールすることは決してできなかった。官房長官だった枝野は、1週間以上ほとんど寝ずに情報を取り込んでは発信し、福島の人たちの緊急避難や都市部の計画停電などについて、菅直人首相とともに判断し続けた。絶えず記者会見を繰り返した枝野こそ原発の怖さを心底知った一人である。その一部始終は、誰よりも強く脳裏に刻み込まれている。

 2016年7月、私自身が製作した映画『太陽の蓋』を公開した。この映画は、暴れ狂うイチエフの1〜4号機、必死でそれを抑え込もうと格闘する東電の現場、避難指示のために必死で情報を得ようとする官邸、そして自己防衛に汲々とする東電本店の無責任な行動、それらをドキュメンタリーではなく劇映画に仕立てた作品だ。当時政権を担っていた菅直人、枝野幸男、福山哲郎などが実名で登場する。

 この映画で俳優菅原大吉さん扮する枝野幸男は、役者が枝野か枝野が役者かわからないぐらいよく似ている。完璧に冷静で落ち着いている。そんな枝野が今後日本のエネルギーを考えた場合原発に頼ることは絶対にないと言いきれる。だからこそ、2017年に立憲民主党を立ち上げた時も党の綱領に「原発に依存しない社会を」と謳い、その姿勢の明確さが多くの人を納得させたのだ。

拡大衆院選に向けたポスターを発表した立憲民主党の枝野幸男代表(左)と蓮舫代表代行=2021年8月18日、国会内

枝野応援団の落胆

 しかし残念なことに、その後少しずつ、当初とは違う発言が新聞紙上に掲載されるようになった。昨年9月の国民民主党との合併では、両党の基本的な原発へのスタンスが違い、特に連合への依存が強い国民民主党は原発の継続を求め、立憲民主党としても脱原発へのメッセージに変化が見られるようになったのだ。

 たとえば今年2月の西日本新聞のインタビューで枝野は「原発を止めるのは簡単なことではない、使用済み核燃料の行き先を決めないことには難しい」などと答えている(「『原発をやめるのは簡単じゃない』枝野氏に聞く」)。おそらくさまざまなケースを喋った中から、このように取り上げられたのだろうが、それにしても、応援団を落胆させた。

 また3月の朝日新聞では、「さいたま市内での講演で、原発ゼロ法案みたいなものは作らないと述べた」とある(「枝野氏『政権とったら原発ゼロ法案作らない』 課題強調」)。脱原発運動家やエネルギー問題に関心が深い支持者が枝野の姿勢に疑問を抱くようになったことは間違いない。

 そこで「がんばれ立憲民主党の会」が行った立憲民主党の支持者に対するアンケート(回答数1,009)では「原子力発電所の再稼働を認めない、新設増設は行わない、と立場を明確にする」ことを次期総選挙の公約にするのはどうかという項目を立ててみた。

 結果は「A:ぜひ必要」「B:必要」と答えた人が92%で、立憲民主党応援団のほとんどが脱原発に対しては明確にしてほしいと願っていることが明確になった。この事実を枝野につきつけるしかない。

 私たちはプロの撮影隊を率いて国会の事務所に乗り込んだ。原発だけではなく、集計されたアンケート結果の主な内容をストレートに聞いてみた(インタビューは2021年8月11日、衆議院第一議員会館の枝野事務所で行った)。

「がんばれ、立憲民主党」 アンケートに示された1009人の声【上】


筆者

橘 民義

橘 民義(たちばな・たみよし) 映画制作プロデューサー

1951年生まれ。早稲田大学理工学部卒業。1987年から岡山県議会議員3期(社会民主連合公認)。自ら起業したポールトゥウィン・ピットクルーHD株式会社(東証一部)代表取締役。映画「太陽の蓋」製作プロデューサー、「がんばれ立憲民主党の会」共同代表。著書に『民主党10年史』

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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