ゼロカーボン化を通じて社会課題を解決するビジョン
与党ブロックと野党ブロックの国家方針の違いは、選好やイデオロギーよりも、人口減少・経済成熟・気候変動などの重要課題に対する認識の違いに基づく。それらが炭素文明とグローバリズムという現代文明の帰結であり、従来の国家方針の範囲内で政策を手直しする程度では乗り越えられないとの認識から、野党ブロックの「個人重視・支え合い」の国家方針は導かれている。それ故に、野党ブロックには保守から革新まで幅広い政治家が結集している。そのことは〈「保革」「左右」を超えた野党再編の対立軸は何か〉で論じたので、ご覧いただきたい。
それら重要課題の根源が同じとの認識に立つと、ゼロカーボン社会のビジョンは、人口増加・経済成長・小さな環境制約を大前提にして組み立てられてきた、従来の社会システムを全面的に変革することになる。大前提が真逆になったのであれば、社会システムは現実に適合しなくなり、十分に機能しなくなる。人々や企業がかつてと同じように頑張っても、同じような成果が得られず、それどころか頑張るほどマイナスになる場合がある。新しい大前提に合わせ、社会システムを組み立て直さなければ、永遠に迷走を続けてしまう。なお、それら重要課題の原因と影響については、拙著『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』現代書館で分析したので、ご関心ある方はご覧願う。
すなわち、ゼロカーボン社会とは、人口減少・経済成熟・気候変動を大前提として変革された社会のことであり、決してエネルギー源だけをゼロカーボン化した社会のことではない。従来の前提を転換し、新しい前提に合わせた社会を創造することである。
よって、
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