菅政権が退陣へ。それでも野党への期待が高まらないなか、もう一つの選択肢とは
2021年09月07日
菅義偉首相の退任表明で、自民党の総裁選をめぐるメディアの報道が熱を帯びてきました。もちろん筆者も誰が菅首相にかわる新たな総裁になるか、強い関心をもっています。
ただ本稿ではその先の話、自民党が新しい総裁のもとでのぞむ衆院選と、その後の展開について書いてみたいと思います。おそらく自民党は今回、それも見据えながら新しい総裁に誰がふさわしいかを決めると考えるからです。
立憲民主党の枝野幸男代表は4日、総裁選に投票できるのは自民党員だけであり、国民全てが参加できるのは衆院選を前にした準決勝という趣旨の発言をしましたが、有権者が“一票の力”を発揮することのできる衆院選こそが、日本の政治の行方を決める決戦の場であることは論を待ちません。
過去3回は、安倍総裁のもとで自民党がいずれも大勝を収め、「自民一強」の長期政権が実現しました。ただ、菅政権に代わった今回の衆院選については、コロナ対策で低下する内閣支持率にくわえ、首相のメッセージ力のなさなどが指摘され、与党の自民・公明にとって厳しい結果が予想されていました。
それが菅首相の退任でどうなるか。新総裁が首相になれば、直後の10月上旬にメディア各社が実施する世論調査で、60%以上の高い内閣支持率を打ち出す可能性もあるので(新内閣発足直後は、いわゆる“ご祝儀相場”で支持率が上がる傾向があります)、その前提で与党の議席について予想してみました。
現在、衆議院における自民党の議席は276、これに公明党の議席29を加えた305議席が与党の議席です。衆院選は、新総裁のもとで、11月2日公示・14日投開票のスケジュールで行われると仮定します。
まず小選挙区ですが、私は前回(2017年)、自民党が野党候補と拮抗(きっこう)したところは、(与党側候補者に特別な事情のない限り)おおむね逆転するとみています。さらに5000票差程度の差だった選挙区でも、野党共闘が新たに成立したり、野党系候補者がこの4年間できちんと活動をしていれば、逆転する可能性があると考えています。
比例区では、そこまで大きな差はつかないにしても、ブロック単位でみると自民党にとっては厳しい地域があり、多少の議席減を覚悟しなければならないのが実情です。
まとめると、現時点では、自民党は20〜30議席程度の議席を減らし、約246〜256議席になるとみています(議席予測の詳細については次回以降にまわします)。
公明党は党勢は厳しいものの、都議選での粘りを見ると、大崩れはしないと思います。ただ、複数の小選挙区では厳しい戦いが予想され、議席としては現有から最悪2議席を失い、27〜29議席あたりになるのではと見ています。
そうなれば、与党としては、自公合わせて273〜285議席ぐらい、というのがひとつの目安になるでしょうか。
総裁選直後には新内閣の組閣・党人事にくわえ、所信表明演説などがあり、その後に解散総選挙となる見込みです。その間には参院補選もあります。大きな支障はないとみられますが、何があるかわかりませんから、発足直後のご祝儀含みの支持率のまま、衆院選の投開票日を迎えられる保証はありません。コロナ感染状況が再び悪化するようなことがあれば、急激に支持率が落ち込むシナリオもあり得ます。
そうなれば、自民党の議席減が40〜50議席となり、自公で245〜255議席前後という「バッド・シナリオ」も考えなくてはなりません。
衆議院の定数は465。過半数は233で、上記のシミュレーションではこれを上回ります。「過半数」は、一般的に選挙における最低限の目標ですが、現実問題として過半数で十分なのか、筆者には疑問です。
国会には「安定多数」や「絶対安定多数」という考え方があります。「安定多数」とは、17ある常任委員会で委員の半数を確保し、かつ各委員会で委員長を独占するのに必要な議席数(244議席)。可否同数なら委員長決裁を行うことができるため、「安定多数」と呼ばれます。
また、「絶対安定多数」は、17ある常任委員会で委員の過半数を確保し、かつ各委員会で委員長を独占するのに必要な議席数(261議席)。委員会運営はさらに「安定」します。
いずれにせよ、国会運営を安定させるには、「安定多数」、できれば「絶対安定多数」がほしいところす。なかでも予算委員会は国会でも最も重要な委員会であり、予算委員会で過半数を抑えたうえで委員長を取れるかどうかが、国会運営で鍵となることは明らかです。
自公合わせて273〜285議席がとれれば、「絶対安定多数」もクリアできますが、「バッド・シナリオ」の245〜255議席前後になれば、「安定多数」の確保がぎりぎりで、「絶対安定多数」には足りないこともありえます。そうなると、「自公」だけでは安定した国会運営は難しくなるかもしれません。
その場合、連立政権の枠組みを変えることも想定しなければなりません。自公だけでは足りないとなると、他党に協力を求める必要があります。そして、「連立」の相手としてまず考えられるのは、与党でも野党でもない第三極、自ら「ゆ党」と名乗る日本維新の会でしょう。
ところで「連立」には、閣内協力と閣外協力という形がありますが、それぞれについて簡単に見ていきたいと思います。
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